厚生労働省が6月6日、4月の毎月勤労統計(速報)を公表した。それによると、実質賃金は前年比3.0%下がり、13カ月連続の減少となった。マイナス幅も3月の2.3%に比べて拡大している。その反面、総務省による消費者物価指数は総合指数で前年比3.5%の上昇。こちらは前月比でプラス幅が0.6%拡大している。つまり賃金が下がっているのに物価は上がっており、日に日に家計は苦しくなるばかりというわけだ。
一方、厚労省が7日に公表した22年度の生活保護の申請件数は24万5686件(速報)で、前年度比で6.9%も上昇。申請件数の増加は3年連続だ。しかも、増加の原因を見ると、今までになかった「新たな貧困世帯」が増えつつあるのだという。
「発表された今年3月と昨年3月の数字を見ると、生活保護を受けている人は約8200人減っているにもかかわらず、世帯数は約4500世帯増えています。この理由は、最近増えている高齢者の問題と思われます。生活保護の受給者の統計は、高齢者、母子世帯、障害者・傷病者といった、生活保護の受給につながりやすい世帯でカテゴリー分けして統計が取られていますが、このうち高齢者世帯では、2人以上の世帯が約2800世帯減っている一方で、単身世帯が605世帯増えているからです。つまり、高齢者の『お1人様世帯』が増えているということです」(全国紙記者)
高齢で働けず、しかも単身残されて生活保護に頼らざるを得ない高齢者が増えているというのは、昨今の世情を如実に反映しているとも言える。とはいえ、その数はそれほど多くはない。となると、何が生活保護受給世帯を押し上げているのか。
「高齢者以外で見ると、これまでは貧困の代表と見られていた母子世帯が約3000世帯も減っています。そして障害者・傷病者世帯が約3000世帯増えていますが、これはコロナ禍のような、社会全体が逆風に晒されるような現実があった場合はどうしても社会的弱者に不利に働くので、その結果とも言えるでしょう。ところが、その一方で『その他の世帯』が約7400世帯も増えているのです。その他の世帯とは、コロナ禍などによって失職したサラリーマンや事業が立ち行かなくなった自由業者等が含まれるでしょう。その人たちが今回の数字を全体として底上げしている原因と思われるのです」(前出・記者)
つまり、冒頭で記したように実質賃金減と物価高騰で家計が苦しいという現状も問題だが、それにも増して、仕事がなくなって貯蓄も底をつき、物価高に耐えられなくなった世帯が想像以上に急増しているということだろう。
岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、「分厚い中間層」を再構築することを目標に掲げているが、それとは真逆の実態が浮き彫りになったようだ。
(猫間滋)