「2027年新基準」でエアコンが高騰 低価格機種に買い替えるなら今だ/佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」

 来年のことを言えば鬼が笑うと言うが、今回は来年どころか、再来年(27年)のことをお話ししたい。

 家電業界の学友が「エアコンで大変だ」と嘆いたのだ。「地球温暖化対策」と「エネルギー消費量」を抑えるため、新たな省エネ基準をクリアしたものだけに販売を認めるという〝エアコン2027年問題〟があるからだと言う。

 いろいろと調べていくと、賢くエアコンを買うためには、27年ではなく、早めに動いた方がいいかもしれないと思って、今回取り上げることにした。

 日本のエアコンの普及率は88%。特に2人以上の世帯では約92%にも上る。ごく標準的な家電製品なので新築の引っ越しなどを除けば、ほぼ全員が買い替えということになる。

 エアコンを買う時に注意したいのは、本体価格だけでなく、その後のランニングコスト=電気代である。私は95年頃に当時の通産省の資料を見て、エアコンによって年間の電気消費量が1万円以上も違うのかと驚いた。そこで、レギュラー出演していた水前寺清子さんが司会を務める「ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)で「エアコンは店頭価格だけで決めては損をする」という特集を組むと、反響が大きかった。そんなことをテレビで取り上げる人が誰もいなかったからだ。

 その後、数年でエアコン購入時には電気代を考慮するのが当たり前となり、量販店では年間の消費電力の目安の金額を掲示することも多くなった。このエアコンなら1年間で電気代が1万5000円、こちらは1万1000円がかかるという具合だ。

 しかし最近は、量販店の店頭から年間の電気代を表示することが減ってきた。かつてと比べると、どの機種も省エネ機能がよくなったからだ。

 ただ、この現状を覆すのがエアコン2027年問題である。そのうち大きく取り上げられるようになると、買い替えを考え始める10年近く前のエアコンを使ってる人たちがソワソワするようになるだろう。

 新基準では冷房時の省エネ性能を現状より13.8%から34.7%の向上を求められているが、今のエアコン売り場には、新基準をクリアした機種と、そうでない機種が混在している。

 クリアしたものは「上位機種」と言われることが多く、同じ広さ向けの冷房機能があったとしても、価格は15万〜20万円と、そこそこ高い。

 電機メーカーの友人や量販店のエアコン売り場の営業マンに話を聞くと「エアコン2027年基準のものしか売れなくなると、可能性として、今まであった低価格のエアコン、例えば4万〜6万円で売られていたような機種は姿を消すかもしれない。すると、全体的に価格が押し上げられる可能性もある」と言う。

 私にしてみれば、毎日使うエアコンは多少高くても電気代の安いものの方がいいが、客間などで年に数回だけしか使わないものは、電気代が多少割高でも、エアコンの本体価格が安い方がいいと思っている。

 新基準に適合しない低価格エアコンは間もなく生産されなくなるだろう。しかし、それでも15年以上前の機種と比べると、省エネ性能は圧倒的で、価格も安い。「低価格のエアコンが欲しい」という層は一定数いるから、来年になると人気も出て低価格エアコンは品薄になるかもしれない。

 ということで、新基準間際の来年より、今年買い替える方がいいかもしれないと思うのだ。

 エアコンの標準的な買い替えサイクルは、およそ10年と言われている。私の仕事部屋のエアコンを調べてみたら、なんと04年製だった。これはいかん、ということで買い替えに出かけたのだが、買う時には、いろいろと注意したいこと、調べておきたいことが山ほどあることがわかった。

 なので次回はエアコン購入についての話です。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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