釣り餌の「アサリ」は50g=500円、スーパーで買えば…/山中伊知郎「あなたの知らない“原価”の世界」

【今回のお値段「釣り餌」:ゴカイ・青イソメ 50グラム500〜600円(店の仕入原価 200〜300円以下)】

 男社会に女性が進出してくるケースは多いが、釣りの世界もまさにその1つであるらしい。ある釣り具業界関係者によれば、

「20年近く前からかな。テレビで児島玲子さんら『釣り女子』が脚光を浴びるようになって、一気に女性が増えましたね。ファッションも女性向けのものが出てきましたし、竿も女性が使いやすいものをメーカーが出すようになりました」

 そんな中で、特に影響を受けたのが「釣り餌」だとか。餌は、針につける「サシエ」と、魚を引き寄せるためにまく「マキエ」があるが、海釣りのサシエの場合、もともとメジャーだったのがゴカイ、青イソメといったミミズに似た「虫餌」。青イソメなら、ウキ釣り、投げ釣り、穴釣りなど何でも使える上、カサゴ・メバル・メジナ・クロダイ・スズキ・アナゴ・カワハギなど、どんな魚にも対応できる。

 一回り小さいゴカイも、キスやハゼなどの投げ釣りには欠かせない。

 価格は50グラムで500〜600円。釣具店はその半値前後で仕入れるが、輸入モノ、養殖物などあって、原価は50〜100円以下だろうといわれている。

 ところが、こうした虫餌をいやがる女性が多いらしいのだ。グニュグニュ動いて気持ち悪いが、死んで動かなくなったら魚は食いつかない。しかも独特の臭いを発する。そこでルアー、いわゆる疑似餌を使ったり、冷凍餌を使った釣りが多くなっている。また、アサリ、アオヤギといった「貝餌」はむき身で使うために、女性もそんなに抵抗感がなく手にできるようだ。しかも、初心者でも割合入りやすいカワハギ釣りには、アサリはぴったり合うとも。

 しかし、実はこのアサリも釣具店で買うと50グラムで500〜600円の値段がついている。もちろん餌用に剝いたり、ある程度の加工はされているものの、スーパーで殻付きのアサリを買っても、100グラムでもせいぜい200〜300円。釣具店よりだいぶ安い。では、スーパーのアサリは釣り餌としては使えないのか。

「使えます。生きてイキのいいものなら、かえってよかったりする。もともと釣りは男社会で、わざわざスーパーと釣具店の価格を比較したりする習慣があまりなかったんです。女性が増えているこれからは、だいぶ変わってきますよ」(前出・業界関係者)

 一方では、「やはり本当の釣りを楽しむなら、虫餌くらいでビビッてられない」と女性の中にもゴカイや青イソメにチャレンジする人もそれなりにいて、「釣り餌」のトレンドが今後どうなっていくかは、まだまだ不透明だ。

山中伊知郎(やまなか・いちろう)釣りといえば、子供の頃、近くにあった「釣り堀」で2、3回体験しただけ。あとはせいぜい縁日の金魚すくい。どちらも下手で、魚がとれた思い出がない。

マネー