【今回のお値段「ドーナツ専門店」:開業資金500万〜600万円前後(小売価格 1個150〜500円以上)】
近年、ドーナツ、それも「生ドーナツ」のブームが続いている。生地にたっぷりと生クリームを練り込んだフワフワでもちもちの食感が特徴で、この生ドーナツを目玉に販売する専門店も続々オープンし、さらには生地にチーズを練り込んだタイプなども登場して「ドーナツ業界」は今、活況を呈している。ある飲食業界の関係者によれば、
「どちらかというと、異業種や未経験者でも参入しやすいんですね。ケーキ店だと、やはりパティシエとしての技術が求められますし、パン屋さんでも本格的に取り組むとなるとパン職人としての経験がものをいいます。ですが、ドーナツなら、自動化もけっこう進んでいて、シロートでもそれなりの品質のモノを作れるのです」
人件費を抑えつつ、品質も安定させる、その2つの目的を同時にかなえるのが「自動化」。回転寿司店における「寿司ロボット」導入をはじめ、進化は止まらないのだが、ドーナツ専門店においても、生地さえ入れれば商品を作ってくれる自動ドーナツ製造機の役割は大きい。しかも業務用でも10万〜50万円と、案外安い。もちろん手作りにこだわり、自動化していない店もたくさんあるわけだが。
では、ドーナツ専門店を開業しようとすると、どれくらい資金がかかるのか。仮にイートインなしのテイクアウトのみなら5〜10坪くらいの広さで十分開業できるし、必要なのはショーケースや冷蔵庫、食器戸棚、給湯設備などで、店舗を借りる保証金や内装工事費を含めても500万〜600万円前後で済む。自分の車をキッチンカーに改造するなら賃料がかからない分、100万〜200万円以上は圧縮できる。フランチャイズでの開業なら、逆に加盟料や研修費などに100万〜200万円くらい上乗せされる。
生地の材料原価としては薄力粉、砂糖、バター、ベーキングパウダー、卵、塩、牛乳、油といったあたりで、1個30〜40円前後で、べースとなるプレーンドーナツを作る。これが小売価格150〜200円くらいか。しかし、生き残るためには、より豊富なメニュー、特に400〜500円以上の値段をつけても売れるような、看板になるヒット商品が必要だ。
「例えばブームだからといって、生ドーナツだけでは、お客さんも満足しない。ドーナツの上に生クリームやチョコをかけた『新メニュー』は当然として、最近は、体の血行をよくする効能のあるシナモンを使ったドーナツが人気です。生地に表はカリッとした食感で中はもちもちの米粉を使うなど、店によってさまざまな工夫がされています」(前出・関係者)
また、ハンバーガーに似た、惣菜をサンドしたタイプなども登場。今やドーナツは「スイーツ」としてだけでなく、「主食」としての役割も持ち始めている。
山中伊知郎(やまなか・いちろう)子供の頃、大人に「なぜドーナツには穴があるの?」と聞いたら、「穴がある方が、油で揚げる時、全体に均等に火が通りやすいだろ」と解説され、「なんだ、そんなことか」とガッカリした記憶がある。