「この日から、我が国は繁栄し、再び全ての人々から尊敬されるようになるだろう。米国の黄金時代が今まさに始まる!」
1月20日(日本時間21日未明)に行われた大統領就任演説で、改めて「米国第一主義」を声高らかに宣言したトランプ氏。最優先課題として掲げる不法移民対策については、メキシコとの国境警備のため国家非常事態を宣言し、軍隊の派遣を明言するなど、以前にも増した強気の姿勢を見せるトランプ氏の今後の言動に世界が注目している。
一方、退任するバイデン氏は20日朝、これまでトランプ氏と対立、批判的な立場を取ってきた人たちに対し、大統領となるトランプ氏が政治的意図をもって刑事訴追することのないよう「予防的恩赦」を与えると発表。トランプ氏からの報復を避ける構えを見せた。
20日正午をもっての政権交代を機に、昨年の大統領選でトランプ氏と火花を散らしたハリス副大統領もホワイトハウスから去ることになったが、そんなハリス氏とバイデン氏との間で、ここ最近大きな亀裂が生じていたようだ。16日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、ワシントンDC国立大聖堂で9日に開かれたジミー・カーター元大統領の葬儀の際、2人はほとんど会話もせず目も合わせなかったようだが、その理由がバイデン氏のある発言にあったというのだ。
「実は、バイデン氏は葬儀の前日に発売された『USAトゥデイ』とのインタビューで、昨年の大統領選を振り返り、もし自身が辞退せず大統領選挙に出馬していたら勝利した可能性はあったと思うか、との問いに『自身が検討した世論調査に基づいたもの』と前置きしつつ『そのように言うのは申し訳ないが、そうだと考える』と語っているんです。当然、ハリス氏もこの記事は目にしているはず。バイデン氏は大統領選後も、たびたび記者団に対し『自分が出ていたら勝つことができたし、勝っただろう』と語っており、ハリス氏もその発言を耳にしてきた。たしかにハリス氏にとってバイデン氏は直属の上司であり、自身に大統領選のチャンスを与えてくれた先輩。しかし、いまさら『自分が出ていたら勝っていた』などと言われれば、いい気分がするはずはない。結果、一連のバイデン発言にウンザリし、両者の関係が冷え込んだのではないか、と分析しています」(国際部記者)
大統領選の際、9月に行われたテレビ討論後、支持率が爆上がりしたハリス氏だったが、実績のなさに加え具体的政策を打ち出すことができないまま好感度が下落。支持率も下降の一途をたどることになった。
「とはいえ、一時期、ハリス氏はペンシルベニアに加え、ミシガンとウィスコンシンという北部ラストベルトの3大激戦州でも、50対45、48対47と誤差範囲内で優位を示しており、もしハリス氏が3州で勝利した場合、当確の可能性があったことは事実。しかし、結果は圧倒的な差でトランプ勝利となってしまった。むろん、ハリス氏の選挙戦略にも問題はあったものの、やはりこの結果は、国民がバイデン政権に対してNOを突きつけた証拠。そんなバイデン氏に代わり途中から選挙戦に出馬し、それなりの功績を残したにもかかわらず、いまだ『自分が出ていたら…』などと言われれば、ブチギレて当然。そもそも両者の決別は時間の問題だったのかもしれません」(同)
なかなか「立つ鳥跡を濁さず」とはいかなかったようで…。
(灯倫太郎)