トランプ次期大統領との早期会談を辞退したり、年頭のラジオ番組で突如「大連立の選択肢はある」と語り、その波紋を受け「今の時点でまったく考えていない」「(連立が)何のためなのかが大切だ」などと一転、火消しに追われるといった迷走ぶりが続く石破茂総理。
さらに、師と仰ぐ田中角栄元総理の「日本列島改造論」にあやかったのか、突如「令和の日本列島改造」なる政策が掲げ、「一極集中を見直し、多様性を未来への力としていく」と、防災庁も含めた地方移転をぶち上げてみたものの、党内からも「まったく中身が見えない」との厳しい声が上がっている。
そんな石破氏が1月12日、BSテレ東の番組に出演した際、日本製鉄によるUSスチール買収がバイデン米大統領の判断で阻止された問題に触れ、「政府として言うべきことは言うが、基本的に企業と企業の問題。民と民がお互いのためとはなんなのかを話し合うべきだ」と述べたことで、「そんな他人事でいいのか」との批判が広がっている。政治部記者の話。
「たとえば大統領令を受けたUSスチールに契約解除する意向があり違約金云々を巡る問題であれば、確かに企業間の問題。しかし今回は、日鉄とUSスチールとの間ですでに合意がなされていたなか、突如米国政府が介入してきたことが問題になっているわけです。しかもバイデン大統領が契約阻止の理由として挙げているのが、米国の安全保障上の問題だというんですからね。同盟国である日本に対し現役の米大統領が『日本は信用できない』と言っているようなもので、この姿勢は今後の日米関係において政治・経済・軍事に及びかねない。それを『企業間の問題』で片づけるわけですから、方々から『評
石破氏は6日の年頭記者会見で、USスチール買収の禁止命令について、「日本の産業界から日米間の投資に懸念の声が上がっていることを重く受け止めざるを得ない」として、米国側に説明を求めるとしていたが、現時点でまだ米国側から具体的な説明があったという報道はない。そのためか13日、バイデン大統領とのオンライン会談後、「日本のみならずアメリカの経済界からも強い懸念の声が上がっている。この払拭というものを強く求めるということは私の方から発言を致したところ」とコメントしているが…。
「日鉄によるUSスチールの買収は、昨年11月の米大統領選で争点の1つだった。そう考えると、今回の禁止命令も事前に予期できたはずで、石破氏は昨年10月1日に就任した時点で、情報を収集するなどの対応をすべきだった。それができなかったということは、米国政府と直接話せるパイプラインがなく、信頼関係が構築されていないということ。悲しいかな、図らずも石破政権の外交における脆弱さが浮き彫りになってしまいましたね」(同)
トランプ政権発足まであとわずかとなったが、果たして日本のリーダーは安倍晋三元総理のようにトランプ氏との信頼関係を構築できるのか。石破氏には「評論家」としてではなく、一国の総理という立場で毅然と交渉に臨んでもらいたいものだ。
(灯倫太郎)