石破総理の外交手腕が試されるUSスチール買収「唯一の手段」

 2025年になって、日米関係では多くの不安要素が顕著になっている。バイデン前大統領が1月3日、日本製鉄によるUSスチール買収を阻止する決断を下し、日本側の対米不満が膨れ上がった。バイデン氏は、米国を象徴するような大企業が外国の支配下に置かれることは国家安全保障上のリスクであり、米国企業を守ることは大統領としての責務だと強調。日本製鉄はバイデン氏提訴に踏み切り、今後の行方が注目される。

 ただ、いずれにせよ米国大統領が拒否の姿勢を示したことで、日本製鉄による買収は現時点で事実上不可能になったと言えよう。バイデン批判を長年展開してきたトランプ新大統領も買収には断固として反対する姿勢に徹しており、米国を最強の国にすることしか考えていないことから、USスチールなど米国を代表する企業が“小国”日本の企業にジャックされることはプライドが許すはずもない。今後の日米会談でも、買収は解決済み、議論の余地ナシという姿勢で臨んでくることが予測される。

 しかし可能性はゼロではなく、一つの手段がある。それは、日本がトランプ大統領が目指すMAGA(米国を再び偉大な国にする)をともに実現していく姿勢を示すことだ。当然だが、米国が最強国であることは日本の安全保障にとってはメリットしかない。米国が弱体化すれば、いつの日か米軍が撤退し、中国や北朝鮮がそれを喜んで軍事活動を活発化させるのは目に見えている。よって、MAGAを一緒に達成しようと石破総理がトランプ氏に訴えることが重要となる。

 USスチールの買収についてもその形で、買収がUSスチールを再生させるプロジェクトであり、MAGAを達成する上で欠かせないと訴える必要があろう。実際、日本は米国にとって最大の投資国であり、日本は米国のために多額の金を使っているという事実が、トランプ氏の心に強く響くことは間違いない。ただし、そうした交渉が成功するか否かは、石破総理の外交手腕次第だ。

(北島豊)

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