トランプ次期大統領の日本“軽視”が“敵視”に変わるUSスチール買収問題

 米大統領選挙から1カ月が経過し、トランプ次期大統領は外交を積極的の展開している。大統領選の直後、トランプ氏は1月の政権発足までは外国の首脳に会わないというスタンスだったが、11月29日にはカナダのトルドー首相をフロリダ州の私邸に招き会談。12月7日には訪問先のフランスでマクロン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領と三者会談を行い、ウクライナ戦争の終結に向けプロセスを進めていくことで一致した。

 一方、日本は未だにトランプ氏と本格的な交流ができていない。トランプ氏の勝利宣言後、石破茂首相は電話で祝意を伝えたというが、5分あまりの短い会談で終了。11月の自身の南米訪問の帰りにトランプ詣でを試みたが実現しなかった。

 石破首相が物事を入念に解釈し理屈を交えゆっくりと話すタイプに対し、トランプ氏は直感と損得勘定で判断し、自由や民主主義など理念的な議論を好まないことから、両者の相性は決して良いとは言えない印象だ。今後の日米首脳会談で、石破首相がそうした理念を前面に押し出す交渉を展開すれば、トランプ氏は石破首相を“使えない男”として日本自体を軽視していく可能性があろう。

 また、トランプ氏が日本に言及したかと思えば、2日に自身のSNSで、USスチールの日本製鉄による買収に対し改めて「断固反対」としている。トランプ氏は米国企業を復権させ、米国人が米国製品を買い、米国経済に勢いを取り戻すことを第一に考えており、日本製鉄などは敵とみなしている。仮にこの問題で火花が散れば、トランプ氏は日本を軽視どころか敵視し、日米同盟が悪化する恐れがあろう。

(北島豊)

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