上から見ると昔の鍵穴のような形が特徴的な、前方後円墳。3世紀後半から7世紀初頭にかけ近畿地方を中心に全国各地に造られた当時の権力者の墳墓で、その数は確認されているだけでも約4700基ある。
しかし、これらの遺跡・史跡とは別に、各地で新たに「前方後円墳」が造られているのをご存知だろうか? 千葉県野田市と香川県高松市の水濠付きのそれぞれ長さ18m、17mのものをはじめ、愛媛県松山市、広島県広島市、福岡県糸島市でも建設中。さらに大阪府大東市にある大阪メモリアルパークでも来年4月からの竣工が予定されているのだ。
しかも、これらの古墳の用途は古代と同じ“お墓”。樹木葬用の墓地として、販売中の野田と高松の古墳では1人用、2人用合わせて1776区画分の永代祭祀墓を用意している。
ちなみに手がけたのは、その名も株式会社前方後円墳。代表を務めるのは、テレビのコメンテーターとしても活躍中の明治天皇の玄孫で知られる作家の竹田恒泰氏だ。
「ただし、同社に先駆けて現代版前方後円墳のお墓を日本で初めて造ったのは、福岡県若宮町にある新宮霊園。22年4月に販売が始まると応募が殺到し、最初に売りに出した約900人分が1年で完売しているんです」(お墓事情に詳しいライター)
そもそも樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を用いるお墓に埋葬することで、近年は大人気。基本的に宗教不問のところが多く、樹木葬用の施設を備えた霊園も増えている。
「散骨には抵抗を感じる人が意外と多く、かといって普通の墓地だと高額なうえに管理も大変です。その点、樹木葬なら料金も比較的安いですし、しっかり管理してもらえます。前方後円墳はそもそもがお墓であり、受け入れられやすかったのだと思います」(同)
最近は少子化に加え、故郷から離れた場所に住んでいる人も多いので、従来型のお墓だと管理が大きな負担。そのため墓じまいを考えている人もいるだろう。前方後円墳は形のインパクトに目が行きがちだが、そんな問題にも配慮した令和らしいお墓なのかもしれない。
※画像は、大阪メモリアルパーク内に建設予定の前方後円墳の予定図