埋葬トレンドは多様化、細分化しているが、「樹木葬」「散骨」という言葉を耳にしたことはないだろうか。
「10年前くらいから頻繁に聞かれるようになりましたが、樹木葬の定義はとても曖昧です」
例えば、穴を掘った筒状のスペースに骨を埋めるなどといったものだが、さらに実情を明かすには、
「大半の方が、森の中で大地に抱かれるイメージを持っていますが、そのような場所はあまりないうえに、実際は大きめの木や草花を目印としたエリアに遺骨が点在して埋葬されている、樹木墓地といったものが主流。遺骨も(パウダー状にしてきんちゃくなどに入れ、直接埋めて)土に還るか、あるいは骨壺に収めるか、個人で入るのか複数で入るのかと、選択も多岐にわたります。自分の想像と乖離していないか、実際に現地を見ることをお勧めします」
かつては特殊な事例として扱われがちだった、新しい埋葬法としての散骨も年々、普及の一途。墓じまいのひとつとしても捉えられるが、海洋散骨の専門会社「ハウスボートクラブ」の村田ますみ社長は、ダイビングが趣味だった母親が沖縄の海での散骨を希望したことをきっかけに起業。今年で13年目になる。
「初年の依頼は6件でしたが、昨年は500件でした。今は日本全国で年間1万件を超えてきています。11年の震災後から増え始めたのですが、命を身近に感じたことで、あらためて自分の死や墓をどう扱うかを真剣に考え始める方が増えてきたように感じますね」
散骨自体は基本的には合法であり、自治体のガイドラインなどを守れば自由に行うことができる。海への散骨はクルーザーのような船に乗り、あらかじめ粉末状にして水溶性の袋に入れた遺骨を沖合で花びらとともにまき、別れの儀式とする。音楽を演奏したり会食するなど、船上でのセレモニーも行える。
また、船ではなくセスナやヘリコプターから海上に遺骨をまく「空中散骨」もあれば、お寺では断られる、ペットと一緒に埋葬という希望も、散骨なら可能で、
「先日は先祖代々のワンちゃん8匹とおばあちゃんの遺骨を海に送りました。ペットと自分の遺骨を混ぜてほしいという要望もあります。おひとりさまの問い合わせも増えていますね。つい最近では、奥様を散骨なさった旦那さんが病気になり、自分と愛犬の遺骨を同じ場所で散骨してほしいという希望で死後委任契約を結んで、病院からの遺体の引き取り、火葬、散骨までを行いました」(村田氏)
ごく簡素化したものでは、ゆうパックなどで遺骨を送り、粉骨から散骨までを業者に任せる「代行散骨」。最近では1万9800円など価格破壊を売りにしている業者も増えている。だが、これには注意が必要と、村田氏は警鐘を鳴らすのだ。
「安さを前面に出すのは遺骨を弔うというよりも、処分するといった扱いになる心配もあります。故人がゴルフが好きだったからゴルフ場のバンカーにまいてほしいとか、世界遺産にまいてほしいなどの希望で個人的に散骨なさる方もいますが、禁止地区もありますし、こうした『ゲリラ散骨』はトラブルを招きやすいのでお勧めはしませんね」
さらに特殊な散骨としては、遺骨を入れたカプセルをロケットで地上100キロ超の空間に打ち上げる「宇宙葬」もあるが、カプセルに入る遺骨はわずか1グラムほど。残りの遺骨の処分は、別途考えなければいけない。
ミニ骨壺に分骨して自宅で供養する「手元供養」も、ごく私的に故人を偲ぶことができる方法として静かに浸透中だ。遺骨の一部を指輪やネックレスなどのアクセサリーにしたりと、より身近に故人を感じたいという遺族の思いを実現したグッズもどんどん登場。
葬式と墓という従来の概念からは、思いがけなく大きな広がりを見せているのが現状である。
【納骨堂】宗派や宗旨を問わず、生前予約が可能。屋内なので天気に関係なくお参りができるのが利点で、管理費の有無がある。ペットと合同で墓に入れる納骨堂も。納骨堂全体の平均費用は1人用50万円、家族用100万〜200万円で、公営が最も安い。他に、ロッカー式は15万〜50万円(位置の高さでも変わる)、棚式15万円、自動搬送式50万円〜、仏壇式100万円〜、墓石式100万円〜。
【合同墓】遺骨のみの納骨、骨壺での納骨、個人スペースがあったり、一定期間は個人墓の形でお参りできたりなどの違いで価格が変わる(10万〜150万円)。
【散骨】海洋散骨は船を借りられれば全国で行え、業者によってハワイなどの海外でも可能。2名から船に相乗りする合同散骨(12万円〜)、船貸し切り(25万円)、代行散骨(5万円)。空中散骨(飛行機)は20万円〜。料金の中には散骨証明書、写真撮影代などが含まれる。
【宇宙葬】日本で宇宙葬を提供しているのは数社。打ち上げはアメリカで行い、3カ月から数年、地球の周りを周回。カプセルの位置を把握できるサービスもある。28万5000円〜。
【バルーン葬】3メートル近くの大きなバルーンに粉末化した遺骨を入れて飛ばし、2時間後には高度30キロ付近の成層圏で散骨されるというが‥‥。24万円〜。
【樹木葬】樹木「葬」と呼ばれるが、実際は墓。パウダー状の遺骨を埋めて土に還すか、骨壺で埋葬するかなどで料金が変わり、墓地の使用期間などもある。公営は安いが、抽選があることも。10万〜80万円。
【手元供養】自宅供養ともいう。素材やデザインが豊富なミニ骨壺、遺骨を入れたアクセサリーなどはどれもスタイリッシュでおしゃれ。お骨から作ったダイヤモンドは、1カラットで300万円!