新しい「葬式とお墓」徹底ガイド(1)「激安を謳う業者はその理由を疑うべし」

 人生の終わりにどう対処するか。家族は何を希望しているのか。昨今の終活ブームにあって、新たな形式の葬儀やお墓がにわかにクローズアップされている。現代の世相を象徴するような合理化システムから従来の常識を打ち破るものまで、その選択肢は大きな広がりを見せているのだ。

 近年の葬儀についてはコストダウンを含め、簡素化の流れが著しい。通常の葬儀といえば、親族以外に死亡の知らせを聞いた会社関係者や近所の住民、遺族の知人などが集まる「一般葬」が主流だが、それを小規模にした「家族葬」が人気を呼んでいる。

 葬儀会社の元スタッフで、葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタントの吉川美津子氏が解説する。

「家族葬は故人と親しい間柄である家族や友人が中心となります。ただし、家族葬といっても、その規模は遺族の感覚によって違うんです。うちは5人家族だから5人という方もいますし、父方と母方の親戚を呼んだら50人くらいになるという方もいるので、人数的な変動がある。そうなると、予算も変わってきます」

 一般葬の平均費用は約196万円(日本消費者協会、2017年「葬儀についてのアンケート調査」より)。家族葬はその半額ほどとされ、葬儀会社の案内には「◯名で◯円」などと確定の値段が明記されている。とはいえ、地域により火葬場や式場の料金も違うため、「東京は◯万円〜」などと追記がしてあるケースも多い。

 吉川氏が続けてポイントを指摘する。

「きちんと料金の幅を理解しておかないと、あとで『ダマされた!』などと葬儀会社とトラブルになることもありますから、最初にしっかりと確認をすることが重要ですね」

 さらに時短化した「一日葬」の選択も増えている。通夜を省いて葬儀・告別式、火葬を1日で済ませてしまうというものだ。

 いや、それどころか、火葬を先に済ませて夕方以降に告別式などを行う究極の時短系、「夕刻一日葬」なるものも出てきている。

「一日葬は10年近く前に業者さんがワンデーセレモニーと銘打って提案したやり方です。高齢者だったり、忙しい中で遠くから来る親戚に、泊まりで2日間も費やさせるのは負担だろうから1日で終わらせよう、という考えからですね。また、夕方からだったら日中には式に出られないという方でも、仕事帰りに出席できます。ただし注意してほしいのは、1日だからといって費用も半分になるわけではないこと。通夜を省いたとしても、会場も祭壇も使用してセレモニーも行うので、時短である以外は一般葬と変わりありません」(吉川氏)

 それではと、もう完全にシンプルにして必要最小限、全て省いていきなり火葬場へ‥‥というのが「火葬式」とも呼ばれる、火葬のみの「直葬」である。かかるのは火葬に関する諸費用と人件費のみなので、予算を抑える場合には最も向いている。最近ではひとり暮らしで親族がいなかったり、家族に負担をかけたくないという人が生前から希望していることも多く、今、最も注目されている葬儀形態だ。

 事前に親戚など周囲の理解を得ていれば、式の参列者への返礼品や香典返しの用意の必要もなく、遺族への負担をかなり軽減することができる。デメリットとしては、故人とのお別れの時間を十分に設けられないこと。また、火葬後に故人の友人などが自宅へ弔問に訪れる可能性が高いので、対応が必要になる場合も。

 自宅弔問といえば、昔ながらの流れである「自宅葬」も、故人を偲ぶ思いを重視した新しい形として、提唱されている。

「さらに極端な例としては、宗教学者の島田裕巳氏が提起した『ゼロ葬』もありますが(骨の一部を火葬場に置いてくる。下記参照)、制約もあり、実行には困難が伴います」(葬祭業界関係者)

 葬儀方法の選択は大切だが、それと同等に重要なのが、葬儀業者の選び方である。インターネットで調べると「都内近郊、近県どこにでも参ります」、「23区最安値」などの売り文句が並んでいるが、

「私も葬儀会社にいる頃に経験しましたが、どの葬儀社にも得意なエリアと不得意なエリアがあります。なので、選ぶ時は地元の事情に精通しているところ、慣習や風習、火葬場、葬儀式場、料理屋さんのことなどに詳しい業者がいいでしょう。良心的な葬儀社であれば、施設の大きさや新しさなどは違っても、金額的に大きな差は出ません。逆に激安を謳うところは、なぜそうなのかを疑うべき。見積もりをすぐ出してくれて、予想される金額加算項目についても、事前にきちんと対応してくれるところをお勧めします」(吉川氏)

 いざ「その時」が来た際に慌てなくてもいいよう、事前調査をしておくことで安心できるのだ。

【直葬】火葬式とも呼ばれる。故人とのお別れは火葬炉の前で、短時間で行われる。価格20万〜30万円。

【家族葬】一日葬・夕刻一日葬:全て人数によって価格の変動あり。家族葬は故人とごく親しい間柄の人が参列。親族や知人などには訃報をきちんと知らせること。10名50万〜90万円などプランの提示が多く、50人を超えるなら一般葬のほうがいい場合も。一日葬、夕刻一日葬は、20名35万円〜といったプランが目立つ。

【自宅葬】葬儀斎場でなく、自宅で行う葬式。出棺の導線、祭壇を置いたり食事のスペースがあることを確認。集合住宅などでは、周囲の住人への配慮も必要になる。葬儀社に頼む場合、40万円ほどから。

ゼロ葬:火葬したあとの骨を、そのまま火葬場に置いてくること。ただし部分収骨が基本で、残骨を置いていける風習のある関西地方でしか実行はできない。予算は20万円ほど。

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