右肩上がりに値を上げていた仮想通貨のビットコインが、ついに大台を突破。11月14日、1ビットコインが1400万円台に達した。これは史上最高値であり、2020年には100万円台を推移していたことを考えると、驚愕の値上がり幅と言えるだろう。
高騰の理由に挙げられるのは、11月5日に投開票が行われたアメリカの大統領選挙。共和党候補のトランプ前大統領が圧勝し、次期大統領に就任することが決まった。トランプ氏といえば、暗号資産を推奨し、今年8月にテネシー州で開催された暗号資産会議で「米国におけるビットコインの将来」というテーマでこう語っていいた。
「私たちは信じられないことを目の当たりにしている。それは暗号資産だ。数年前の暗号資産を振り返ると、成功しないだろうと言っていたが、今は記録的な数にまで達している。これは通貨の一種であり、私は賛成する」
さらにトランプ氏は、アメリカを世界で一番の暗号資産大国にするため、ビットコインのマイニング(採掘)に力を入れていくと宣言していた。アメリカには暗号資産の保有者が約2730万人いると言われ、今回の当選を受けて、多くの投資家が「買い」に走った姿は容易に想像できる。経済ジャーナリストが明かす。
「多くの機関投資家は、リスクを考慮してビットコインの価格に連動する『現物ETF』をポートフォリオに組み入れていませんでした。しかし、トランプ政権が発足すれば、暗号資産市場はより安定したものになる。そんな見通しもあって、世界的な資産運用会社がビットコインの現物を大量購入した影響も大きいでしょう。また、トランプ氏は大統領就任後、暗号資産に厳しい措置を取ってきた米証券取引委員会のトップを更迭する意向で、実現すれば、さらに暗号資産の信用度が増していくと見られています」
さらにビットコインの価格を押し上げそうなのが、電気自動車メーカー「テスラ」や宇宙開発事業「スペースX」のCEOを務める実業家イーロン・マスク氏の存在だ。
「マスク氏は柴犬をモチーフにした仮想通貨『ドージコイン』の支持者として知られ、不正に価格を操作したとして、投資家から約40兆円もの損害賠償を求める裁判を起こされていました。ところが、今年8月にこの訴訟は却下され、11月にようやく両者の合意のもとで裁判は終結。マスク氏はトランプ政権において、DOGE(ドージ)と呼ばれる政府効率化省のトップに就任することが決まりましたが、これを受けてドージコインの価格は約80%も上昇しました。一般的に、ドージコインは発行上限がないため、貨幣価値が下がりやすいと言われ、一方、ビットコインには発行上限がある。“インフレ通貨”のドージコイン購入の際に、投資家がリスクヘッジで“デフレ通貨”のビットコインを購入したことも無関係ではないでしょう」(前出・ジャーナリスト)
トランプ政権の発足で、来年以降、ビットコインは2000万円台まで値を上げるとの声も聞かれるが、暗号資産バブルはいつまで続くのか。注視していきたい。
(月見文哉)