パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに襲撃を仕掛けたことに始まる軍事的応酬が激化してから10月で1年となったが、今日ではパレスチナのガザ地区での戦況以上に、レバノン情勢が危うくなっている。
イスラエルは、レバノン南部を拠点とする親イランのフーシ派武装勢力ヒズボラの殲滅を目的とした軍事行動をエスカレート。両国の国境地帯からレバノン中部の首都ベイルート、レバノン最北部のシリア国境地帯など各地にあるヒズボラの拠点への空爆を行なっている。しかし標的が正確に選別されているとは言い難く、金融機関や病院、役所など、軍事施設とは関係のない場所も次々に空爆を受け、民間人の犠牲者も増加の一途を辿り、イスラエルのネタニヤフ首相は「我々はレバノン全土を攻撃している」としている。
レバノンの国際空港はベイルートに1つあるだけで、これが使用できなくなれば外国人のレバノンからの退避は極めて困難になる。10月、イスラエルはこの国際空港付近に空爆を行い、主要滑走路が一時的に使えなくなるなど、フライトの運航停止や大幅な遅延が生じた。
レバノン情勢が激化する中、外国人の退避も進んでいる。日本政府もレバノンに滞在する日本人の退避を進め、一部の国々はレバノンと地中海を挟んで隣り合うキプロスへの避難を進めている。そこで気になるのが、元日産会長・カルロス・ゴーン被告の行方だ。会社法違反(特別背任)などで起訴され保釈中だった2019年12月、レバノンへ逃亡。以降、同国内にいるはずだが、居場所は分かっていない。レバノン全土攻撃となればフランスなどへ移ることも考えるだろうが、果たして。
(北島豊)