レバノン情勢悪化でカルロス・ゴーンが窮地に!?

 2019年12月に日本からの脱出を企て、母国レバノンに逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏。現在は首都ベイルートに滞在中と言われているが、同国は通貨暴落による深刻な経済危機の真っ只中。ユニセフの報告によると、国民の77%が食料を買うお金すらない経済的困窮状態に陥っているという。

 また、2020年8月にはベイルート港の化学薬品貯蔵施設で大爆発が発生。死者218人、負傷者7000人以上を出し、港湾地区が壊滅。港から1キロほど離れたゴーン氏の自宅ですら爆風による被害を受けたほどだった。

 この爆発事故の影響により、同月ディアブ首相(当時)が総辞職を発表。今年9月にミカティ新首相が就任するまで後任が決まらず、1年余りの間、事実上の無政府状態となり、政治的混乱は現在も続いている。

「住民による大規模デモに加え、イスラム教シーア派組織ヒズボラやキリスト教マロン派の民兵組織レバノン軍団などの武装組織の活動が活発になっています。しかも、激しい対立関係にある両者の武力衝突が10月に入ってからもベイルート市内で起きており、地元住民にも死傷者が出ています」(中東情勢に詳しい国際ジャーナリスト)

 他にもレバノンには数多くのテロ組織が存在し、70年代に世界を震撼させた日本赤軍の一部のメンバーも潜伏している。そんなこの国で現在懸念されているのは内戦の再発だ。

 1975年~1990年まで内戦状態にあっただけにベイルート逃亡後の現地の政治的混乱、経済や治安の悪化はゴーン氏にとっても大きな懸念事項であるはずだ。

「ゴーン氏はICPO(国際刑事警察機構)に国際手配されているからです。現政権は彼を売り渡す気はないようですが、今後もそうとは限りません。経済支援を条件に応じることも考えられますし、異なる主義主張の人間がトップになれば身柄を拘束される可能性もある。かといって違う国に移ることもできないため、心中穏やかではないでしょうね」(同)

 日本から脱出して万事OKというわけにはいかなかったようだ。

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