8月19日、NHKのラジオ国際放送などのニュースで「釣魚島(尖閣諸島)と付属の島は古来から中国の領土。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します」と中国語で発言。さらに英語で、「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」との不適切発言を繰り返した中国籍外部スタッフに対し、NHKは21日付で本人との契約を解除。今後、男性に対し損害賠償請求を行い、刑事告訴も検討中であることを明らかにした。
現時点で、この男性スタッフが何を目的としてこの発言をしたのか、また背後に何があるのかなど、詳細については明らかにされていないが、一部には組織的指示があったとの情報もあることから、一日も早い真相究明が待たれるところだ。
さて、そんな放送テロ事件からちょうど1週間が経過した26日、なんと今度は、中国軍の情報収集機1機が長崎県・男女群島沖の領空を侵犯するという事態が勃発。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、警告等の対応を実施したことが政府により発表された。航空ジャーナリストが解説する。
「領空というのは、海岸線から約22キロの範囲の領土及び領海の上空を指し、国際法上、国家は完全かつ排他的な主権を持っています。つまり領空侵犯は、航空機がこれらの法令に違反し、許可なく他国の領空に侵入する行為。中国軍機による侵犯が確認されたのは、自衛隊が対領空侵犯措置をスタートした1958年以来初めてですが、防衛省が南西諸島などの防衛態勢強化を進めている最中ですからね。永田町や霞が関に与えた衝撃はあまりにも大きいと言わざるを得ません」
林芳正官房長官は27日の記者会見で、「我が国の主権の重大な侵害であるだけでなく、安全を脅かすものであり全く受けられない」とした上で「中国軍機の行動、意図目的については答えを差し控えるが、同日中に中国政府に対して、外交ルートで極めて厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求めた」と強調。一方、同日、定例会見した中国外務省の林剣副報道局長は「中国の関連部門が現在、状況を確認中だが、強調したいのは、中国はいかなる国の領空にも侵入する考えはないということだ」と述べ詳細な説明はスルー。さらに、中国の主要メディアもこの事案についてほとんど報じていないことから、現在も意図は不明のままだ。
とはいえ、NHKで起きた“放送テロ”からわずか1週間という、このタイミングでの領空侵犯。常識的に考えて、中国側による何らかの意図があるとみるのが妥当だろう。
「一説には、NHKの国際放送問題で中国に反発している日本国内の世論に揺さぶりをかける目的では、といった意見もありますが、日本は今、自民党が総裁選の真っただ中で、ある意味、政治的に空白のような状況が続いている。そんな状況をさらに混乱させるため、中国側が仕掛けてきたという見方もあります」(同)
この問題に対し、中国国内のSNS上では《これは日本の艦艇が領海に入った報復だ》《よくやったぞ!》といった投稿が相次いでいるようだが、これは毎度おなじみのプロバガンダ。ただ、好き勝手にさせないためにも、日本政府には毅然とした態度で最大限の抗議することを望むばかりだ。
(灯倫太郎)