大型の台風10号が日本列島を縦断しそうだ。気象庁は8月29日午前0時の予報で、中心気圧が「925hPa(ヘクトパスカル)」に達するとし、「経験したことのないような暴風や記録的な大雨が予想される」と、最大級の警戒を呼びかけている。
925hPaというのは、1959年(昭和34年)9月26日に潮岬に上陸し、紀伊半島から東海地方を中心にほぼ全国にわたって甚大な被害をもたらした「伊勢湾台風」に匹敵する規模。では実際、伊勢湾台風が日本列島にどのような被害をもたらしたのか、今一度振り返ってみたい。
伊勢湾台風の上陸時の中心気圧は929hPa。人的被害は、紀伊半島の和歌山県、奈良県、伊勢湾沿岸の三重県、愛知県、日本アルプス寄りの岐阜県を中心に広がり、死者4697人、行方不明者401人、負傷者は3万8921人にも上った。経済的被害は阪神・淡路大震災の数倍、大正12年の関東大震災に匹敵するレベルだった。
防災ジャーナリストが語る。
「伊勢湾台風を語る上で欠かすことができないのが、高潮の被害です。名古屋港では観測史上最高となるN.P.5.31mの潮位を記録。伊勢湾沿岸の防波堤や海岸堤防に猛烈な高潮が襲いかかりました。また決壊した堤防が修復されるまで、4カ月以上にわたり浸水状態が続き、被害を一層大きくしました。気象庁の報告書によると、伊勢湾台風による死者・行方不明者の7割が高潮のよるもの。また、名古屋港の『貯木場』から、長さ5m、重さ数トンにもなる木材が市街地に向かって大量に流れ出し住宅を破壊。当時の新聞では『暴走木材』などと呼ばれました」
台風研究学者によると、地球温暖化によって台風災害の危険性は年々増大しているといい、最大風速60m以上という「スーパー台風」のリスクも高まっているという。気象庁が「伊勢湾台風に匹敵する勢力」と警戒を呼びかけたら、それは「最強クラス」の台風が迫っていることを意味する。昭和34年当時よりは治水も進み、人々の防災意識も高まってはいるが、「自分だけは大丈夫」と油断せず、いざというときは早めの避難を心がけたい。
(ケン高田)