中国から追放された北朝鮮労働者が今度はロシアに回され「ハッキング」「闇サイト」核兵器開発の資金稼ぎ

 昨年来、中国に派遣された北朝鮮の労働者らが、賃金未払いで反発し数千人規模の連鎖ストライキと暴動を起こすなど、中国当局も頭を痛めていた北朝鮮派遣労働者問題。

 今年1月には中国東北部・吉林省にある縫製・水産物加工工場などで、北の労働者による大規模な暴動が勃発。一部労働者が工場設備を破壊し、工場長や職場長、班長を閉じ込めて殴る蹴るなどの暴行を加えるといった事態も発生し、北朝鮮当局は本国から人を出し暴動鎮圧におおわらわだったと報じられている。北朝鮮ウォッチャーが解説する。

「国連安保理決議により加盟国は北朝鮮労働者雇用を原則禁止とすることが採決されたのが、2017年。しかし、中国は以降も労働ビザでなく学生ビザなどを利用して北朝鮮労働者の滞留を許可し、北朝鮮労働者の中国企業での就業を黙認してきました。ところが、国連安保理での北朝鮮への制裁が厳しくなったことで、国際社会への手前、労働者問題を放置しておくわけにはいかなくなった。そこで、中国は19年から北の労働者を本国に戻すよう動き始めた中、新型コロナウイルス感染症が発生。結果、国境を封鎖せねばならず、北の労働者が中国やロシアなどにそのまま残ることになってしまったんです」

 その際、北朝鮮側が労働者らに伝えていたのが「賃金はコロナ禍が収まり、帰国する際に一括して支払う」という条件だった。だが何のことはない、賃金が「戦争準備資金」として北朝鮮に送金されていたことが明らとなり、それが引き金となって暴動に発展したというのである。

「中国側としても、コロナ禍が収束した今、問題を抱えた北朝鮮の労働者をあえて本国に留めておくメリットはない。そのため、ビザが満了した北朝鮮労働者から帰国させる、つまり国外追放という措置をとっていた。ところが、中国を離れた労働者の中には本国に戻ることを許されず、新たな活路を見つけて外貨稼ぎを継続するため、本人の意思など無視でロシアに送られている者が多いというのですから、なんとも恐ろしい話です」(同)

 対北朝鮮情報筋の談話を紹介した8月1日付けの韓国紙「中央日報」によれば、中国当局により帰国を要求された北朝鮮労働者のうち、特にIT関連の労働者がロシアに再派遣されているケースが多いようだ、と伝えている。

「国連安保理傘下の対北朝鮮制裁委員会が今年3月に発表した報告書によると、北朝鮮が前年、海外労働者派遣を通じて稼ぎ出した外貨獲得額は、国連の制裁前から3倍増の11億(約1650億円)。北朝鮮は中国に約5万人の労働者を派遣していたとされますが、そのなかでIT関連労働者は、数百人規模だと見られています」(同)

 北朝鮮のITビジネスと言えば、暗号資産ハッキングをはじめ、賭博や売春斡旋など不法サイトの開設等々がよく知られるが、金正恩総書記も、IT分野が政権の統治資金と核・ミサイル開発の費用を稼ぐ新たな資金調達手段として、大きな期待を寄せているとされ、中国から今度はそれをロシアで展開していこうというわけなのか。一方、ロシアも多くの北朝鮮労働者を雇用することで極東地域開発における労働力が確保できる、つまり、両者はここでもウィンウィンになるというわけだが、ロシアと関係をどんどん深める北朝鮮に対し、距離を置く中国。今後の三者の出方が気になるばかりだ。

(灯倫太郎)

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