パリ五輪で8月2日に男子サッカーの準々決勝が行われ、日本は優勝候補のスペインに0-3と敗退したが、攻守ともに完全に力負けの内容だった。
スペインは万全とも言える体勢で試合に臨んだ。サッカーでは通常あり得ない「中2日」の強行日程に、1次リーグでは第3GK以外の21選手がピッチに立ち、ほとんどの選手が1次リーグで90分以上の出場時間を記録した。
「スペインは当初から、『勝負は準々決勝から』という想定のコンディション作りでした。オーバーエイジ(OA)枠も、スペイン1部リーグで主力の選手3人をフル活用した。日本戦に向けて完璧な準備をしてきたのです」(夕刊紙記者)
「不運」もあった。周知のように、前半40分、FW細谷真大が相手DFを背負いながら振り向きざまに完璧なシュートを決めた。このスーパープレーには、スペインのバルセロナのDFで若干17歳ながら主力を張るクバルシも「完敗」の表情を見せたものだった。ところが、「細谷のつま先が相手よりわずかに前に出ていた」とビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入して、オフサイドと判定されたのだ。スポーツ紙には、W杯カタール大会の「三苫ゴール」になぞって「細谷の1ミリ」などという見出しも躍った。
試合後、大岩剛監督は、「苦しい結果だが、選手たちは次を目指してくれれば」と涙を浮かべながら語ったが、「監督の涙は試合に負けたことだけが理由ではありません」というのは、前出の記者だ。
「スペイン戦で日本のDF陣の先発は、全て国内組のJリーグ勢。スペインリーグの主力ばかりを揃えた布陣とは、圧倒的な力の差がありました。つまり、今回の五輪代表は、大岩監督が招集しようとしたベストメンバーにほど遠かったのです。当然、日本サッカー協会(JFA)の責任は大きい。五輪代表の選手招集だけでなく、そもそも、JFAはW杯に初出場した98年にはフランス、そして最近ではスペイン代表の強化育成を完コピしているだけと言われています。強豪国の選手の育成法を学ぶのは必要なことですが、成果が現れているとは言い難い。ゴールを決める決定力の差も開くばかりです」(前出・記者)
大岩監督の悔し涙の「本当の理由」を、JFAは真剣に考える必要がありそうだ。
(小田龍司)