パリ五輪まで1年「ロシア・ベラルーシ参加の是非論」が代表選考にも影響

 東京五輪がコロナで1年延期したこともあり、早いもので来年5月にはもうパリ五輪が開幕する。逆に、1年前が迫りつつあるということで、ロシアとウクライナの戦争が、両国選手の五輪への参加・不参加の議論に飛び火している。

「2月1日にパリ五輪の組織委員会が、ロシアとベラルーシ選手の参加の是非については、国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟(IF)によって決定されるとの声明を出しました。競技に関しては例えばサッカーでは、昨年2月に国際サッカー連盟(FIFA)がロシアの大会出場を禁止した一方、国際体操連盟ではこの問題が大きく持ち上がった中、両国選手の国際大会復帰を検討すると表明するなど、競技によって濃淡があります。そしてIOCは両国選手の復帰は『中立』の立場ならOKという条件付きで認める方向で検討するとしていますが、どんな判断を下すにせよ批判は噴出するわけで、当事者としては頭の痛いところでしょう」(スポーツ紙記者)

 なぜ、いまこの話題なのかと言えば、五輪1年前が近づいているということで、代表選手の選考過程に関わってくるからだ。すでに前哨戦が始まっていて、その動きは目まぐるしい。

「1月25日にIOCからロシアとベラルーシ選手の大会参加を『中立』の立場などの条件付きで検討する案が出されると、ウクライナの委員会は『除外』を主張、ボイコットする可能性まで示唆しました。するとIOCは『時期尚早でボイコットの脅し』とかなり強い調子で“遺憾の意”を示し、ウクライナ側に釘を刺しました。今回ウクライナはボイコットの決定こそ見送ったものの、最終手段の武器としては残したかっこうです」(同)

 ただIOCやIFの決定だとしても、それをどう受け止めるかは国の判断にもよる。例えばバルト3国やポーランドといった地理的にロシアに対する脅威が大きい国は「中立というベールの下でロシアとベラルーシを国際大会に戻すことは、政治的決定と広範なプロパガンダを正当化するものだ」として、「除外」への機運が高いようだ。

 当のウクライナにしてみれば、200人のスポーツ選手や指導者を戦争で失ったとされ、スタジアムなどのスポーツ施設も爆撃を受けている状況で、既に「政治とスポーツ」を切り離すことが出来ない状況にある。
 
 だからIOCとIFは重い〝踏み絵〟を踏まされることになるわけだが、世界を真っ二つにもしかねない論議でどんな判断が下されるやら。ましてや本大会ともなれば、このまますんなりと遂行されるとは到底思えない。
 
(猫間滋)

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