【中国】尖閣諸島の「海上暴力」エスカレートで日本漁船が狙われる最悪の事態

 中国大陸に近い台湾の金門島周辺の海域で7月2日夜、同海域で操業していた台湾の民間漁船が中国海警局によって拿捕された。

 中国海警局の巡視船2隻が民間漁船に接近したのち立ち入り検査を強制的に実施。その後、同漁船は中国側にある港に連行された。民間漁船の乗組員らから連絡を受けた台湾当局はすぐに現場に駆けつけ、民間漁船を解放するよう呼び掛けたものの、衝突を回避するため追跡を断念せざるを得なかったという。

 金門島付近では今年2月にも台湾当局に追跡されていた中国漁船が誤って転覆し、乗組員2人が死亡する事故があり、今回の拿捕はその報復の可能性もあろう。

 中国は最近、海上での行動を過激化させている。中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海の南沙諸島周辺では、フィリピン軍の海上基地に物資を運搬するフィリピン船や同海域で操業するフィリピン船に対し、中国海警局の巡視船が意図的に体当たりしたり放水銃を浴びせたりするケースが頻発。フィリピン当局はそんな中国の海上暴力のエスカレートに強い懸念を示している。

 しかし、台湾やフィリピンに対する中国の過激な海上暴力は、日本と中国が領有権を争う尖閣諸島でも発生する恐れがある。最近、尖閣諸島周辺を航行する中国海警局の巡視船の中には機関砲などを搭載した船も見られるが、海上保安庁の船舶を沈没させる目的で意図的に体当たりしてきたり、同海域で操業する日本の民間漁船を強制的に拿捕したりすることが懸念されよう。台湾の漁船が拿捕されたのと同じ2日午後には、中国海警局の船3隻が尖閣諸島沖の領海内に侵入し日本漁船の動きに合わせ航行。約42時間にわたって居座り、4日午前8時頃にようやく領海外側に出て行った。

 南シナ海で中国とフィリピンの間で政治的な緊張が高まる中、南沙諸島の周辺海域で長年魚介類を獲ってきた漁業関係者の中には、もう危なくて漁業ができないと漁師を諦める人たちもいるという。日本の先島諸島の漁師の間でも同様の懸念が広がっているが、尖閣周辺で南シナ海のような暴力が横行し事故でも起きようものなら、中国に在住する日本人の安全も脅かされる事態に発展する恐れもあろう。

(北島豊)

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