夏場所を全休した尊富士は、次の場所で真価が問われる。勝って当たり前、負ければ酷評される。既に大関昇進に向けて、カウントダウンが始まっている大の里とは対照的である。相撲ライターが言う。
「尊富士が所属する伊勢ヶ濱部屋には、熱海富士など稽古相手が豊富にいます。そのうえ、親方(元横綱旭富士)と横綱照ノ富士が目を光らせている。稽古場では一瞬たりとも気が抜けない、かっての二子山部屋のようです」
春場所では新入幕優勝して「110年ぶり、両国以来の快挙」と称えられた。その両国は細身のソップ型力士ながら足腰がしぶとく、稽古場横綱と言われ、横綱大錦とも五分に渡り合ったそうだ。最高番付は関脇。尊富士はどこまで上がれるか。
「試金石になるのが名古屋場所です。十両からの再出発が予想されますが、優勝して当たり前。10番勝つのは最低条件。そのためにもケガの復調具合が気になるところです」(前出・相撲ライター)
尊富士は新入幕優勝した春場所の前の初場所で十両優勝している。つまり、名古屋場所で十両優勝すれば休場をまたいで3場所連続優勝する快挙となる。9月の秋場所に大きく勝ち越せば、11月の九州場所には三役も狙える。体調が万全であれば、十分可能だろう。
大の里-尊富士は、これから10年にわたって攻防を繰り広げるライバルとなるだろう。春場所で対戦した際は、わずか3秒ほどで先手を取った尊富士が大の里を押し出して下した。
大の里は年内に横綱に、尊富士もそれを追って来年中には頂点を極めるという専門家の見方も一部にある。角界は「大尊時代」がいよいよ到来しそうな雰囲気だ。
(蓮見茂)