高安「初優勝」へ最大のチャンス!八角理事長が嘆いたパッとしない上位陣

 3月の春場所で11勝4敗、優勝次点の好成績を収めた元大関高安。1月の初場所では場所前に稽古しすぎ、稽古総見では大関陣を次々と破る絶好調ぶりを見せながら、本場所は2度も途中休場してしまった。それが春場所では目を見張るような活躍。本人はこう話していた。

「3月は『無理せず』という調整がハマった。気合が乗ってくると稽古をやりすぎる。ほどよく、自制しながら工夫してやった方がいいと分かった。優勝できなかったが、自分の中で(優勝との)距離感が縮まっている。何度でも挑戦したい。この気持ちを忘れず鍛えます」

 高安は13代鳴戸親方の愛弟子の1人である。相撲ライターが言う。

「13代鳴戸親方は土俵の鬼と言われた45代横綱若乃花が率いた二子山部屋の出身で、がんで急逝した大関貴ノ花(二子山親方)の弟弟子にあたる。ということは、高安も兄弟子の稀勢の里(二所ノ関親方)も土俵の鬼の流れをくむ系譜なのです」

 つまり高安は、猛稽古で一時代を築いた若貴兄弟と同じ一門に属していたことになる。しいて言えば、優勝できる下地は既にできているということなのだ。では、あとは何が必要なのか。本人に言わせれば、それこそ“稽古をやりすぎることなく、ほどよく、自制しながら工夫する”ことだという。

 稽古しない力士が増え、横綱審議委員会による稽古総見が5月2日、両国国技館で行われたが、先場所途中休場の横綱照ノ富士は準備運動こそしたものの、左脇腹付近を気にする素振りを見せ、相撲を取らなかった。その他大関陣もパッとせず、苛立った八角理事長は「ピリッとしたものがなかった。横綱がいないというのはあるけれどもね。全体的に淡々と、緊張感がなかった」と苦言を呈した。

 高安にとっては最大のチャンスが巡ってきたということか。

(蓮見茂)

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