大統領五期目に入ったロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻にさらに力を入れるとともに、核兵器の使用についても「常に臨戦態勢にある」と強気の姿勢を崩さない。
だが、その一方で、長引くウクライナ侵攻により、国家経済は逼迫していると言われ、同時に国民の心の荒廃も顕著だという。象徴的なのが軍部の腐敗だ。次々と幹部らが汚職で摘発されているのである。
筆頭はショイグ前国防相の側近で国防次官だったイワノフ氏。4月に収賄の疑いでロシア連邦保安庁(FSB)に逮捕された。米通信社記者が言う。
「イワノフ次官が第三者と共謀し、国防省が発注した契約で多額の賄賂を受け取っていたというのが逮捕容疑です。同氏は16年から次官を務め、国防省で不動産管理、官舎、建設などを担当していただけに、賄賂の総額は日本円で億単位になると見られています」
ロシア国防省内の汚職はイワノフ次官だけではない。同じ国防省で人事総局のユーリ・クズネツォフ局長も当局に拘束された。計1億ルーブル(約1億7000万円)相当の現金を横領した容疑だ。プーチン大統領は、ショイグ国防相を交代させ、副首相のアンドレイ・ベロウソフ氏を新国防相に任命し、国防省内の引き締めを図っている。
そして、こうした現状を憂える国民の間で厭戦気分が高まっているという。
「昨年暮れにはモスクワのナイトクラブでパーティーが行われ、歌手や俳優など、ロシアの著名人がほぼマッパ状態で楽しむ姿がSNSで広まり大きな話題となりました。プーチン政権は4月、このパーティーを主催した女性ブロガーを、反戦を煽った容疑で摘発、起訴しています。しかし、こうした反戦を訴えるパーティーは、ロシアの様々な地域で広がっているのです」(フランスの新聞社関係者)
5期目に入ったプーチン氏は、ウクライナ戦争だけでなく、経済の逼迫や政府内汚職、軍部腐敗に加えて、国民の厭戦気分とも戦わなければならない。強気発言の裏では実にやっかいな問題が山積しているのである。
(田村建光)