4月3日午前、台湾東部沖を震源地として発生した大規模地震。震源地に近い花蓮県では震度7に近い揺れが観測。激震は離島を含め台湾全土にも及んだとされ、8日時点で死者は13人、負傷者は約1100人にのぼっている。国際部記者の話。
台湾での地震を受け、岸田文雄首相はすぐに日本語と台湾で用いる繁体字の中国語で、「台湾の皆さんへ」と題する緊急声明を発表。「海を接する隣人である台湾の困難に際し、日本としては必要な支援を行う用意があります」とお見舞いの言葉を述べ、台湾の蔡英文総統もすぐにXで反応。こういったSNS外交を通じ、両国の友好関係が国際社会に改めて認知されることになった。
一方、中国も3日、台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官がSNSの「微博」で「被害を受けた台湾同胞に真摯な慰問を表す。被害の状況と今後を注視していくとともに、救援を行う用意がある」と表明。しかし、台湾側はこの申し出を即座に断ったことが台湾中央通信社の報道で明らかなっている。
「朱報道官の表明とほぼ時を同じくして、国連に常駐する中国代表団の耿爽紐副代表が『台湾への同情と関心について国際社会に感謝する』などと述べている。これではまるで、台湾が中国に統治されている一地方政府だと、国際社会にアピールしているようなもの。当然、台湾外交部は『国際社会の認識を操作するために地震を利用する中国の恥知らずな行為を厳粛に非難する』と猛反発したというわけです」(前出・国際部記者)
近年、以前にもまして緊張関係が高まる中国と台湾だが、その理由の一つが今年1月、台湾で行われた総統選により、習近平政権が長年敵視してきた民進党の頼清徳・副総統が当選。5月から就任することにある。
「台湾メディアによれば、頼氏の総統就任を前に、このところ中国による軍事恫喝が強まる傾向にあるとされ、地震前日の2日にも30機の軍用機が台湾海峡に偵察。そのうち6機が中間線を超えてきたと報じています。さらに台湾国防部の発表によれば、地震当日の3日にも解放軍の偵察機が3機飛来していたのだとか。これではいくら中国側が『救援を行う用意がある』などと“善意”をチラつかせたところで鵜呑みにできるはずがない。報道によれば、『微博』には《このままどさくさに紛れて台湾を統一してしまえ!》といったとんでもないコメントも散見しているとされ、一切削除されていないのだとか。この地震で両国の溝がさらに深まった可能性も否定できません」(同)
人の弱みに付け込んで…とはよく言ったものだが、地震という惨事をきっかけに、両国の緊張関係がこれ以上エキサイトしないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)