甲子園の「ラッキーゾーン復活」を阻む意外な反対勢力

 甲子園球場に懐かしい光景が蘇るかもしれない。ラッキーゾーンが20数年ぶりに復活しそうなのだ。
 
 ラッキーゾーンの復活計画は、ここ数年、阪神経営陣が検討を重ねてきた。ホームランが出ると観客が盛り上がるのは、今も昔も変わらない。楽天、ソフトバンク、ロッテも、本拠地球場の外野フェンスを前に出し、そこにテラス席を設けるなどして、ホームランの出やすい環境に変えてきた。阪神がラッキーゾーン復活を真剣に検討するのも、時代の流れかもしれない。

「タイガースは近年、打線の低迷が指摘されてきました。今季も長打不足に泣かされています。チーム総本塁打数89は、リーグ5位。首位巨人が167本なので、阪神は巨人の半分ほどしか打っていない計算です(9月15日時点)」(スポーツ紙記者)

 改めてだが、1991年までの甲子園球場は右中間、左中間の外野フェンス前に金網が設けられていた。そのエリアはブルペンとして使われた。スタンドに届かなくてもホームランになることから「ラッキーゾーン」と呼ばれ、甲子園の名物になっていた。その後、野球界全体が打高投低となりラッキーゾーンは撤廃されたが、長打の出にくい低反発の統一球が導入されて以降は、各球団とも球場を狭くする傾向にある。

 しかし、阪神のラッキーゾーン復活については、身内である一部OBから反対の声も出ているという。

「かつて、阪神の四番打者・田淵幸一氏に本塁打王のタイトルを獲らせるため、オフの間にちゃっかり、ラッキーゾーンを前に出す改修工事を行いました。だから、ラッキーゾーンに後ろめたい思いのある関係者もいるのです」(球団関係者)

 ラッキーゾーンのあった最後の91年、甲子園球場で出た阪神打線の本塁打数は53本。撤去された翌92年は29本。データ上ではラッキーゾーンは”観客が盛り上がる役目“を十分に果たしていたわけだ。

「07年秋から09年オフにかけ、甲子園球場は大幅な改修工事をしています。スタンドの座席、照明、バックスクリーンなどがリニューアルされたのですが、ラッキーゾーンに関しては手を付けられませんでした」(球界関係者)

 このリニューアル工事では、バックネット後方の放送席と記者室を屋内に移動させる計画もあったが、「高校球児が炎天下で頑張っているのに、取材する側が冷房の効いた快適な室内では申し訳ない」との反対意見で、こちらも見送られている。

 いまや高校野球は打力上位、楽々とスタンドインするスラッガーが増えているだけに、ラッキーゾーン復活が実現するためには、高野連の協力が不可欠となりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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