3月22日夜、ロシアのモスクワ郊外のコンサートホール「クロッカス・シティ・ホール」で発生した銃乱射事件。翌日に内務省は実行犯とされる4人を含めた11人を拘束したと伝えた。
ロシア政府が「追悼の日」と定めた24日には、公共機関に国旗が掲揚され、惨劇の舞台となったホールの前には献花に訪れる市民の姿が多く見られたが、同日、モスクワのバスマニ地区にある裁判所に姿を見せたのが、テロ容疑で逮捕されたタジキスタン国籍の4人。裁判所は4人を正式に起訴したが、ロシアには死刑制度がないため有罪となれば最大で終身刑が言い渡されることになる。
ところで、裁判所に出廷した容疑者らは、いずれも顔が腫れ上がった状態で、目の周りにはアザのような痕があり、耳を覆う大きな包帯も目を引いた。
「それが逮捕時に抵抗してできた傷なのか、あるいは拷問された傷なのかはわかりませんが、4人が拘束されて以降、ロシア政府よりテレグラム上には、彼らを尋問する惨たらしい映像が次々にアップされ、波紋が広がっているんです」(国際部記者)
SNS上にアップされた映像には、殴る蹴るに加え、ズボンを脱がされ、身体に電気ショックの装置に繋がれたまま地面に倒されたり、ナイフで耳を切り取られたり、さらにはハンマーで殴打され顔から血を吹き出す等々、正視できない映像も数多く確認できるが、
「ある映像では、ひげ面の若者が地面に座らされ『クロッカスで何をした』と聞かれ、『報酬として50万ルーブル(約82万円)と言われ、人々を金のために撃った』と、なまりのあるロシア語で答えています。これらの映像が本物なのかフェイクなのかはわかりませんが、実際、法廷に現れた容疑者らには、拷問の痕と見られる青あざや傷、さらに片方の耳に大きな包帯を巻いている容疑者もいました。プーチン政権の拷問行為を批判するロシア人権団体は『拷問はプーチン大統領が指示したのは明らかだ』との声明を出し痛烈に批難しているものの、5月22日までの勾留期間中、はたして容疑者たちが拘置所内で生きていられるかどうか」(同
銃乱射事件後、イスラム国(IS)が声明を出したが、プーチン氏は事前にテロ情報を掴みながら手をこまねいていたこともあり、ISには触れず、あくまでも「犯行の裏にはウクライナの指示があった」と、毎度お馴染みの主張を繰り返している。
しかし拷問映像がアップされるや否や、IS側も反応。ISの分派であるイスラム国ホラサン州は25日、SNSを通じ「拷問は数千人の兄弟に血の欲望を増加させるだけ。気を付けよ。我々が投獄された兄弟のために復讐できないと考えない方が良い。攻撃は神の意志によりイスラム国のムジャヒディン(聖戦で戦う戦士)がお前たちを処罰できるということを立証したもの。待て。近く神の意志があるだろう。プーチンを含むすべてのロシア人、子どもと女性はともに虐殺されるだろう」と報復を予告している。
ウクライナに次いで火ぶたが切られた、ロシア対ISの血で血を洗う戦い。市民に被害がないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)