プーチンは「育児支援強化」金正恩は「涙の母親話」女性尊重の演説で喝采を浴びた独裁者の思惑

 3月8日の国際女性デーは、女性の地位向上、女性差別の払拭等を目指す国際的な連帯を強化する日とされ、今年も世界の国々でさまざまなイベントが開催された。

 タス通信によれば、ロシアでは次期大統領が確実視されているプーチン大統領が6日、ロシア・ソチ近郊のシリウスで開かれた世界青年学生祭典の閉会式に出席。「女性の宿命は代を継ぐことだ。それは固有の自然の贈り物だ」「我々はこれを大きな尊敬心をもって支援する」として、育児支援にも尽力すると演説し、会場から万雷の拍手が起こったとされる。ロシアウォッチャーの話。

「ロシアはソ連崩壊前後の1980年代後半から出生率低下と死亡率が上昇しはじめ、2000年代に入ってからは旧ソ連圏からの移民や労働者の流入で一時出生率は回復したものの、昨今の新型コロナやウクライナ戦争の影響もあり、人口減少に歯止めがかからない状況。人口急減は国力の低下と直結しているため、プーチンとしては何がなんでも出生率を増やしたい。そして、生まれてくる子供たちには政権の意に沿った“愛国教育”を強化していきたいという思惑がある」

 ロシアでは昨年9月からの学校の新学期で、無人機の操縦法などの軍事教練を義務化し、歴史教科書にはウクライナ侵攻を正当化するプーチン政権の主張が盛り込まれた。

「つまり今後10年、20年と戦争が続く場合は、戦場で闘うのは明日を担う君たちだと。『女性の宿命は代を継ぐことだ』という発言の裏には、プーチン氏のそんな思惑が透けて見えますね」(同)

 一方、ロシアと昨年以来蜜月関係にある北朝鮮でも、8日を「国際婦女節」と名付け、これを体制宣伝の契機と位置付けているが、それに先駆けた5日には子女をきちんと育てたとされる「模範母親」らによる体験談を発表する女性集会が開かれ盛り上がりを見せたのだとか。

 さらに、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は8日付の社説で「敬愛する(金正恩)総書記同志を社会主義大家庭の親として高く押し戴いて生きることこそ、わが女性たちの最も大きな幸運で、最大の幸福」だとし、特に母親の役割を強調。「人間の品格は母親の手の下でまず形成されることになる。母親らは子どもたちをまっすぐ、見事に育てることにあらゆる真心と努力を尽くさねばならない」と説いている。北朝鮮事情に詳しいジャーナリストが語る。

「ここ最近、北朝鮮ではやたらと『女性の地位、役割の向上が国力強化に貢献する』という言葉が強調されていて、昨年12月、11年ぶりに『全国母親大会』が開催された際、出席した金総書記は集まった子供を持つ約1万人の母親を前に『誰もが困難な時期には、自分を産んで食べさせ着させ、第一歩を踏み出せるように育ててくれた母親のことを思います。私も党と国家事業を担当して苦労するたびに、母親たちのことを思います』と語ってハンカチで涙をぬぐった。しかし、女性の尊厳を強調する裏で、頻繁にお披露目される娘・ジュエ氏を後継者とするための準備をしている、との見方を示す専門家も少なくありません。プーチン氏にしろ正恩氏にしろ、国を担うためには女性の心を掴み、国力を強化させたい。そんな思惑が見て取れますね」

 利用できるものは何でも利用し群集心理を操る。それが独裁者共通の思考のようだ。

(灯倫太郎)

ライフ