いまだ解決の糸口が見つからないイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの戦闘。イスラム教の断食月ラマダン中の停戦をカタールやエジプトが仲介して促したものの、合意には至っていない(3月10日現在)。
周知のように戦闘のきっかけとなったのは、昨年10月7日に行われたハマスによる、「スーパーノヴァ」音楽フェスティバル会場での襲撃事件だ。
「このフェスティバルはユダヤ教三大祭の1つである『仮庵祭(かりいおさい)』に合わせて開催されていたもので、参加者は数千人。その中へ50数名のテロリストがバンに乗って現れ、無差別に銃を乱射し、結果、260人以上の犠牲者を出した。銃撃を逃れて森の茂みに隠れていた若者まで見つけ出され、戦闘員らによって1人ずつ射殺されたと言われますから、まさに地獄絵図だった」(国際部記者)
イスラエル政府は後に、この襲撃の際、被害者たちがハマスのテロリストから性的な暴行を受け、その後に殺害された可能性が高いと主張した。だが、ハマス側は「根拠がない」としてイスラエル側の主張を単なるデタラメだと繰り返し述べている。
ところが、3月4日、国連本部で紛争下の性的暴力問題を担当する、パッテン事務総長特別代表が衝撃的なコメントを発表したのだ。
パッテン氏は、ハマスに拘束された人質が性的虐待を受けた「明白で確証的」な情報が見つかったとして、「現在も性的虐待が継続していることを示す合理的な根拠がある」との正式見解を示したのである。
「パッテン氏率いる9人の国連専門家チームは、1月29日から2月14日にかけてイスラエルを訪問。現地ではイスラエル団体と33回の会合を行い、奇襲攻撃の際の被害者や目撃者、元人質など34人から話を聞き取り、襲撃現場で撮影されたものを含む5000枚以上の写真と約50時間分の映像を調査、分析しました。今回発表されたのは、その内容を24ページにまとめた報告書です。報告書には、フェスティバル会場だけでなく現場につながる道路周辺でも、下半身が毀損された遺体が発見されていたことや、ハマスによる別の襲撃現場、キブツリリムでも、同様の性的暴行や集団暴行の痕跡が確認されたとしています」(前出・記者)
パットン氏によれば、ほかにも「全てを脱がされ手を縛られたまま銃に撃たれた女性被害者」が複数発見されており、「これも性的拷問または非人道的で屈辱的な性的暴行が発生したという情況証拠に他ならない」と強調している。
報告が事実であればハマスの所業は鬼畜という他ないが、一方で、そのハマスが実効支配するガザ地区では3万人以上が死亡し、約60万人が飢餓に直面していると言われる。一刻も早い戦闘の終了を願うばかりだ。
(灯倫太郎)