「早死にサウナ」と「長生きサウナ」(1)我慢比べでは「ととのう」どころか…

 ここにきて、盛り上がっているサウナブーム。その一方で、中高年の男性が気になるのは、サウナ風呂での不慮の事故だ。17年には、二所ノ関親方(元若嶋津)がサウナから帰宅途中に倒れ、その後、緊急手術に至ったケースも報告されている。健康増進にも、危険な早死ににもなりかねないサウナの「正しい入り方」を専門家が伝授する。

 現在、放送中のテレビ東京系ドラマ「サ道」。ネプチューンの原田泰造が演ずる主人公は、サウナに興味がなかったが、「蒸しZ」なる人物と出会い、一気にサウナにハマる設定だ。そこで、登場するキーワードが「ととのう」という言葉。

「ドラマの中では、サウナに入ったあとに全身がリラックスして、視界が揺らぐような幸福感に包まれた状態を指して『ととのう』と言っています。主人公は、さまざまなサウナを訪れる中で、新たなサウナの楽しみ方を身につけていくというストーリーです」(テレビ誌ライター)

 現在、サウナを併設している銭湯なども含む温浴施設は2万6000軒と言われている。今や日本はそれほど「サウナ天国」なのである。

「現在の主流はサウナ→水風呂→外気浴という流れを中心とする、疲れを取り心身ともにリフレッシュするということを目的とした入り方です」

 と語るのは、サウナ歴30年以上で、〝サウナ王〟の異名をとる太田広氏だ。温浴施設コンサルティング業を営むプロサウナーに続けてもらおう。

「現在のサウナブームは第二次にあたり、ツイッターなどSNSの口コミから若い人など一般層にじわじわと広まっていきました。楽しみ方も昔と違って、人それぞれの好みや入浴スタイルを重視した、個人の快感を追求する形に変化しています」

 まさにドラマ「サ道」のような社交場から、テーマパークのようなエンターテインメント施設に変貌しつつあるというのだ。一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所が行った調査(2018年)でも、その数字は実証済み。月1回以上サウナ浴をする「ミドルサウナー」は推計1159万人(前年は1042万人)と、登山やハイキング人口と並ぶ規模となっているほど。

 かつて、サウナといえば「大人の男の社交場」だった。宴会でしこたま飲んだあとに、接待先と裸のつきあいとばかりにサウナで商談。その後、ビールを一杯ひっかけ、そのまま再び夜の街に繰り出す。昭和の社交の風景が、第一次サウナブームを牽引していたが、今の第二次ブームは、健康にも配慮した「カラダに優しい」サウナが主流だという。

 では、正しいサウナの入り方とはどんなものか。「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)でもおなじみの、秋津医院の秋津壽男院長が語る。

「サウナのメリットは快適にいい汗をかいて老廃物を出すこと。また、オフィスのエアコンなどで狂ってしまった体にメリハリのある刺激を与えて、本能的に持つ強弱を思い起こさせることで自律神経を鍛えられることです。しかし、長時間のサウナは百害あって一利なしです。中高年のサウナ好き男性の間には、熱い湯に長い時間入っているのが粋という江戸っ子のやせ我慢文化が根強いけど、これが大間違い。サウナは我慢するほど体に負担がかかり、血圧が上がって脳出血などを引き起こすこともある。サウナの室内では、時計を見ながら何分入れるかと我慢比べのような雰囲気になりがちですが、人と競争したりはせずに、苦しさを感じるようになったらすぐに外気に触れたほうがいいでしょうね」

 もはや、長生きサウナに「我慢」の文句は厳禁と言ってもいい。

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