国産初の民間旅客機「スペースジェット」を開発する三菱航空機が9月6日、米メサ航空から70席クラスの「スペースジェットM100」を100機受注する覚書を締結したと発表した。50機の購入は確定で、残り50機の追加購入権が含まれており、2024年の納入を目指すという。
「現状、M100の価格は40億〜50億円と想定されており、100機すべての受注に成功した場合は4000億以上の取引になると見られています。同機は座席数が100席未満の短距離ジェットとしては、他機と比べても抜群の広さを誇る客席を持ち、燃費性能の面でも高く評価されているのです」(航空雑誌編集者)
M100は今年6月に開催されたパリ国際航空ショーで開発が公表されたばかりだが、メサ・エアグループの会長兼CEOのジョナサン・オーンスタイン氏は「広いキャビンと快適性、最新技術に運航経済性を兼ね備えたスペースジェットM100 は、米国のパイロットスコープクローズ制限下で最高の体験を提供することができる」と絶賛している。
「三菱航空機が100機受注の覚書を勝ち取れた要因には、スコープ・クローズというものがあります。これは米航空会社とパイロット組合の契約の一部で、リージョナルジェット運航に関する制限(航空会社間で微妙な違いはある)が、最大76席、39トンと定められており、今年には90席に緩和されると予想されていました。しかし交渉は難航しており、現状維持のままという見通しが有力になっています。そのため、70席クラスのM100に白羽の矢が立てられたわけです」(前出・航空雑誌編集者)
しかし一方で、こんな見方もある。
「M100のベースとなった90席クラスのM90は、これまでに400機を受注していますが、度重なる開発の遅れによって20年半ばに初号機の納入を目指しています。しかし、6度目となる納入延期の可能性も囁かれており、もしそうなればM100の開発にも支障が出る可能性が指摘されている。こうしたことが、場合によっては三菱航空機、ひいては三菱重工業の信用を失墜させる恐れもあると言われているんです」(航空ライター)
M90もM100も、何とか計画通りに進んで欲しいものだ。
(小林洋三)