ヤマト運輸に「クビ切り」された「クロネコメイト」2万5000人の意外な本音

 一部業務を日本郵政グループに委託したことに伴い、1月末付けでメール便などの配達を担当していた2万5000人の「クロネコメイト」との契約を解除したヤマト運輸。

 昨年6月の発表後、クロネコメイトの労働組合は再三にわたって団体交渉を申し入れていたが、同社は彼らが個人事業主だったことから「団体交渉の対象にならない」と一貫して拒否していた。そうした経緯もあったことから、今でも不満を持つクロネコメイトも多いと言われているが実際はどうなのか。元クロネコメイトのTさん(40代男性)が言う。

「不満を挙げたらキリがないですが、それ以上に仕方ないって気持ちのほうが大きいですね。社員ではなく個人事業主という時点で首切り予備軍なわけですから。来てほしくなかったですけど、今回のような最悪の事態が訪れることは想定していました」

 Tさんは職を失ったものの、露頭に迷っているわけではなく、2月中旬から別の運送会社で働くことが決まっているという。

「まだ転職先が決まらないって人は少ないと思いますよ。運送業界はどこも人手不足ですし、私はヤマト運輸が用意した支援サイトの求人情報を見て応募しました。メイト時代の収入(月25~30万円)よりは下がりそうですが、仕事を選べる立場じゃないので」(Tさん)

 実は、同社は昨年10月時点で5万件を超す求人情報が寄せられていることを公表していた。Tさんと同様に契約を解除されたKさん(50代男性)も、支援サイト経由で転職先を探し、解除翌日の2月1日から新しい会社で働き始めているという。

「私も収入ダウンの見込みですが、良かったのは正社員としての採用だったこと。社員なら簡単にクビを切られないですしね。私に限らず、みんな『個人事業主として働くのはこりごり』って言ってます」

 また、クロネコメイトには契約年数に応じて3~7万円の謝礼金が支払われた。ただ、これに対する不満もあるようだ。

「出ないよりはマシとはいえ、金額を知ってガッカリしました。謝礼金がもう少し貰えたら働き始めるのを少し先にして家族で旅行にでも行きたかったのですが…」(Kさん)

 ヤマト運輸とは状況が異なるが、近年は従業員の個人事業主化を図る企業が増えている。ライフワークバランスを意識した働き方が可能となり、副業も自由に行えるなど利点もある。ただし、労働基準法は原則適用外で会社の福利厚生も対象外となることに加え、今回のように会社都合で一方的に契約解除というケースもある。やはり、雇用が安定する社員の道を模索したくなるのは当然だろう。もっとも、社員になればなったで今度は社員ならではの苦労や悩みが発生するのかもしれないが…。

 それぞれの道に進んだ2万5000人の「元メイト」たちの奮闘を祈りたい。

(トシタカマサ)

ライフ