6月1日から大手電力7社が最大4割の電気料金値上げで、日本列島から「またか…」のため息が聞こえてくる。一方、値上げではないが、やはり多くの人から「えーっ!そうなの?」という嘆きが聞こえてきそうなのが、宅配便の「翌日配達」の見直しだ。
「ヤマト運輸では6月1日から特定の地域での翌日配達がなくなりました。対象は東京・神奈川など首都圏から、島根(松江市、安来市)、広島(福山市)、鳥取、岡山と、四国4県への配達分で、翌々日の配達となります。また、岩手県から滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良の関西圏への配送、静岡県の一部地域と富山県から福岡県へ送る際も、同様に翌々日配達に。今までは宅急便を出したら、あまり遠方でなければだいたい次の日に届くのが当たり前といった感覚があったので、特に急ぎの配送を望む場合は注意が必要です」(経済ジャーナリスト)
理由は簡単に想像されるだろう。なかなか減らない再配達のコスト高と、近頃世間で騒がれている物流の「2024年問題」だ。
再配達に関しては、国交省が毎年10月に行っているサンプル調査で、最新の22年10月が再配達率11.8%(大手3社)で、前年同月比から0.1%減。が、過去5年間の推移をみると、18年半ばの16%をピークに、20年春には8%まで急速に改善したものの(コロナ禍の在宅の影響)、その後12%近くまで悪化し、この2年ほどは12%弱で下げ止まっている。国交省では25年度には7.5%程度の目標を掲げてキャンペーンを行っているが、このままでは達成はおぼつかない。何かよほど抜本的な手を打たない限りは無理だろう。
22年にはアマゾンの配達員が、再配達の時間を3度すっぽかされたことから、不在票に「家におれや!」と怒りの心境を書き込むという事件があったが、配送業者の気持ちはわからないでもない。
そして「2024年問題」がある。そもそも2024年問題とは、24年4月1日からドライバーの時間外労働時間の上限が年960時間に制限されるため、荷物がさばき切れなくなって物流が滞るとされるものだ。ただ単に人手が足りなくなるというだけではなく、物流業者の売上と利益も減るので、一般のユーザーにも料金の形でいつ跳ね返りが来るか分からない。
「そこで最近言われるようになったのが、将来的な再配達の有料化です。言うまでもなく再配達は、受け取った配送料は変わらないのに、人手とコストが丸々余計にかかって流通業社の経営にそのままのしかかってきます。となれば再配達の有料化は、自然な流れとして出てきます。実際、ヤマト運輸が17年に27年ぶりの料金値上げを打ち出した時には、再配達の有料化に含みを持たせたとの報道もありました」(同)
ただ、そのまま有料化すれば済む話かといえば、事はそう簡単にはいかず、例えば受取人が在宅にもかかわらず、すぐに応答がなかったので配達人が不在と思い持ち帰った場合や、配送側が再配達の指定時間に配送できなかった場合などに、料金をどう設定するかという問題が残る。意外に難しいのだ。
国はまさにいま2024年問題対策として、ネット通販などでよく見かける「送料無料」の表示の見直しに取り組みはじめたとも報道されている。こちらは運送業界の料金設定の慣習の問題だが、再配達もそのうち見直しの俎上に載せられるであろうことは間違いない。
かつては水と空気はタダだったものが今ではそうでなくなったように、再配達がタダというのも近い将来は過去のものになりそうだ。
(猫間滋)