積水ハウスの「米企業7000億円買収」でわかった日本企業「アメリカ買い」の狙い

 年明け以降、連日好調が続く日本株。年内に「4万円到達」との声もある中、好調の波を反映してか、日本企業の「アメリカ買い」が明らかになった。

「今回、買収を行ったのは積水ハウスです。1月18日にアメリカ戸建て住宅ハウスメーカーを傘下に置くM.D.C.ホールディングスとの間で、約49億ドル(7250億円)という大型買収を発表したのです」(経済ジャーナリスト)

 日本企業の米企業の大型買収と言えば、わずか1カ月前に、日本製鉄が鉄鋼大手のUSスチールを2兆円で買収すると発表したばかり。この買収劇では、相手がかつてアメリカを代表する企業であり、影響力のある鉄鋼業界の組合が反対を唱えていることで、アメリカ大統領選挙の行方さえ左右しかねないと注目されている。

「両社の買収の狙いは明らかです。飽和状態で先細るばかりの日本の内需を見越した上で、日本より格段に成長が見込まれるアメリカの需要を取り込みたいという考えですね」(前出・ジャーナリスト)

 実は、積水ハウスのライバル社である大和ハウスも、昨年12月と今年1月に、相次いでアメリカの戸建て住宅企業を買収している。国内の争いが、図らずも「外国企業のM&A合戦」に発展しているという構図だ。

「日本企業によるアメリカ企業の買収は、飲料業界などでも散見されます。例えば、サッポロHDは昨年8月にクラフトビールメーカーのストーンブリューインを、キリンHDもやはりクラフトビールのベルズ・ブルワリーを22年に買収して、競争の場が海外にまで広がっています」(前出・ジャーナリスト)

 バブル時代に見られた買収劇は、その多くが有り余った金を注ぎ込むことでさらなる成長を画策したものだった。だが、上記のような最近の企業の海外進出は、生き残りをかけた「日本脱出」とも言える。同じ買収劇でも時代によって内情は大きく異なるようだ。

(猫間滋)

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