Netflix「地面師たち」が大反響で、黒歴史が蒸し返された「被害企業」の踏んだり蹴ったり

 Netflixで7月25日から配信が始まったドラマ「地面師たち」が大反響、配信から3週間ずっと「日本のTOP10テレビ部門」で1位をキープしている。

 豊川悦司、綾野剛らが扮する詐欺集団が土地の所有者を仕立て上げ、山本耕史らのデベロッパーに売りつける詐欺を働き、リリー・フランキーら警視庁捜査2課の刑事がこれを追う…というストーリーだ。新庄耕氏の同名小説が原作で、こちらも7月26日に続編の「地面師たち ファイナル・ベッツ」が発売されるや、早くも重版となっている。

 本作は実話を元にした小説で、16年にあった「新橋女性地主白骨遺体事件」に始まり、五反田にある古い旅館の物件の購入を巡って50億円を騙し取られた17年の「積水ハウス事件」で頂点を迎える展開になっている。

「ノンフィクション作品ではなく小説なので細部は現実と異なりますが、五反田の古い旅館だった物件の本来の所有者だった女性になりすますニセ女将や、その手配師を登場させるなど、おおまかな流れは実際の事件と酷似しています。騙された大手不動産デベロッパーの社名は『石洋ハウス』なので、社名まで実在のものに寄せたあたりにこだわりを感じさせます」(同事件を取材した経済ジャーナリスト)

 そもそも昭和の時代に跋扈し、久しく社会から忘れられていた「地面師」という存在が平成の世に再び脚光を浴びたのは、事件を巡って関連書籍も出されるなどちょっとした流行語になったからだ。だが、事件から7年が経って、また配信ドラマでこれが蒸し返されたものだから、積水ハウスにとってはたまったものではない。

 ましてや同社では事件後、社長が会長を追い落とすクーデターまで勃発。実力派会長が、五反田の取引を推進した当時の社長の責任を追及して解任を求めるも否決。まるでそれを想定していたかのように、今度は逆に会長の解任動議が出され、可決されるという下剋上劇が展開された。地面師事件が業界最大手トップのクーデターに発展し、それが「保身」というノンフィクションン書籍にもまとめられたほどなのだから、なおさらだ。

 ところが、黒歴史の蒸し返しはこれだけに留まらなかった。

「積水ハウスが騙された事件のあと、この物件を本物の地主から正式に用地買収したのは、旭化成グループの旭化成不動産レジデンスでした。旅館を解体してタワマンを建設したのですが、この物件をモチーフに使用した『ATLAS』マンションシリーズのCMが8月17日に始まって、皮肉にも『地面師たち』の配信に重なったのです」(同)

 積水ハウスにとっては、なんとも頭の痛いタイミングとなった。

(猫間滋)

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