日産、不透明感残る新経営体制とエスピノーサ次期社長を待ち受ける「悪路」

 日産は3月11日、内田誠社長が退任し、商品企画責任者のイバン・エスピノーサ氏が後任に当たる人事を発表。ゴタゴタ続きにあってのトップ交代だから、だいたいは世間から歓迎されるものだが、今回の人事に関しては否定的意見が目立つ。

「昨年末の電撃的なホンダとの経営統合発表後、わずか1カ月半後に撤回された際は、ホンダが日産を子会社化するという方針を日産のプライドが許さなかったとされました。この時、内田社長は混乱収束後の2026年まで留任するとのことでしたが、数日後に英紙が『内田社長退任なら統合交渉再開へ』と伝え、ならば『統合撤回は何だったんだ』と憶測を呼びました」(経済ジャーナリスト)

 外信がこれを報じた裏には、メインバンクのみずほ銀行による交渉再開への根回しと、そのためのリークという見方があった。それと同時に「内田社長のクビをすげ替えるだけで良いのか」という批判も高まっていた。

「経営統合には取締役12人のうち、2人が賛成で10人が反対したとされています。となると内田社長を代えるにしても、まだ反対派が多数で残ることになる。それはおかしいというわけです。そして今回の社長交代でも、同じく責任を取るべき立場の独立社外取締役8人はそのまま残りました。言葉通り、トップのクビをすげ替えただけで、極めて不透明感が残る新人事と見られています」(同)

 新社長のエスピノーサ氏にまず求められるのは、経費節減など不可避の施策ばかりで、トランプ大統領の言葉ではないが、多くのカードが残されているわけではない。また、何をやるにせよ議決権の15%を保有する筆頭株主のルノーの顔色を伺う必要があるし、取締役には古株がゴッソリと残っている。

 エスピノーサ氏は03年入社の日産プロパーなだけに、しがらみを断ち切るのは大変だろう。

(猫間滋)

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