昨年9月の金正恩総書記訪露によるプーチン大統領との会談以降、その距離が急速に近くなった感のある北朝鮮とロシア。今月13日からは北朝鮮の崔善姫外相がロシアを訪問し、16日にはプーチン氏、ラブロフ外相と個別に会談したと伝えられる。
記者会見に臨んだペスコフ報道官は、改めて両国間の関係を「北朝鮮は最も近い隣国であり、パートナーだ。あらゆる分野でパートナーシップを発展させており、今後も発展させていく」と、今後の関係強化に前向きな姿勢を示した。
そんな中、両国の蜜月関係をアピールするかのように、ロシアの旅行会社が極東ウラジオストクから北朝鮮の「高級リゾート」へのスキーツアーを2月からスタートするとして、話題になっている。北朝鮮問題に詳しいジャーナリストが解説する。
「ツアーを取り扱っているのはウラジオストクの旅行会社『ボストーク・イントゥール』で、ウェブ広告によれば、ツアーは4日間。平壌に滞在しながら記念碑や博物館、寺院などを訪問したのち、『馬息嶺(マシクリョン)スキーリゾート』に移動、スキーを楽しむことが出来るというものです。同リゾートは2014年1月に開業した複合施設で、最高地点は標高1360メートル。初心者向けを含めて10コースあり、リフトやゴンドラは4基。さらに隣接する五つ星ホテルは部屋数120室で、屋内プールやジェットバス、レストランからダンスルームまで完備しているのだとか。4日間のツアー料金が日本円換算で10万8000円と割安なことに加えて、北朝鮮へのツアー旅行は新型コロナ禍で国境が閉鎖されて以降、初めてとあって注目を集めています」
とはいえ、北朝鮮では資源不足の影響で、頻繁に電気やガスが止まることは有名な話。さらに首都平壌ならいざ知らず、遠く離れた馬息嶺にあるリゾートホテルに、果たして宣伝広告通りの設備があるかどうかは甚だ疑問だ。
「関係者の話では、今回のツアーは昨年12月に北朝鮮と国境を接するロシア極東のオレグ・コジェミャコ沿海地方知事が北朝鮮を訪問した際、馬息嶺スキーリゾートに足を運んだことで実現したもの。もちろん北朝鮮滞在中は、ロシア語を話すガイドが同行する、との名目で監視役が付くようです。売上はわずかでも貴重な外貨獲得の機会で、両国の友好の印にもなりますからね。これがうまくいけば、今後ツアーの種類が増えていくかもしれません」(同)
昨今は、北朝鮮在住のロシア人女性ブロガーが、インスタグラムやユーチューブで、このリゾート地をさかんにアピールする動画をアップしているが、ロシア語の独立系メディアによれば何のことはない、この女性は在北朝鮮のロシア大使館員の妻だというから、さもありなんといったところか。ただ、孤立する両国が今度は観光産業でも、しっかりと手を結び始めたことは間違いなさそうだ。
(灯倫太郎)