ロシアの思う壺!ポーランド、ウクライナへの支援打ち切りでNATOに広がる動揺 

 いよいよ、ウクライナ戦争長期化による弊害が周辺国で現れ始めている。

 これまで、軍事・財政両面でウクライナに対し大きな支援を行ってきた隣国ポーランド。ポーランド政府は戦争勃発後、早い段階からウクライナ難民の受け入れを開始。現在、その数は100万人以上。さらに、NATO加盟国として初めてウクライナに戦闘機を供与し、加盟国に対しても、より多くの軍事支援を行うよう呼び掛けてきた、熱心な支援国の一つだった。

 ところが今月20日、ポーランドのモラウィエツキ首相が地元テレビに出演、「ウクライナ産穀物の輸入により、自国市場が混乱することは認められない。武器供与をやめ、自国軍備を増強する」と発言したことで、NATO加盟国の間に波紋が広がっている。

 全国紙国際部記者が経緯を解説する。

「ウクライナは昨年に始まったロシアの侵攻により、黒海における輸出航路が塞がれてしまったことで、隣接する東欧・中欧国家へ陸路と水路を通じ穀物輸出量を増やすという方策を取った。しかし、これにより現地の農産物価格が暴落。EUは暫定措置として5月に、ポーランドをはじめ、ハンガリー、スロバキア、ブルガリア、ルーマニアの5カ国に限りウクライナ産農産物の直接輸入を禁止、経由のみを可能にし、それが今月15日に満了したんです。ところが、ポーランドとハンガリー、スロバキアの3国は自国農民保護の観点から禁輸措置継続を発表。これに対しウクライナは反発し、これら3国を世界貿易機関(WTO)に提訴するという状況になっていたのです」

 そんな流れを受け、ゼレンスキー大統領が19日の国連総会の演説で「欧州でわが友好国の一部は政治的演劇で結束し、ロシアが舞台を展開できるように支援している」と発言したから大変。怒り心頭のポーランド外交部は、在ウクライナ大使を呼びつけ、猛抗議。結果、支援の打ち切りが決定することになったとみられる。

「実は、ポーランド政府は軍事的な支援だけでなく、同国内に滞在する約100万人のウクライナ避難民に対しても多大な財政支援をしていて、シュミット副家族・社会政策相によれば、今年5月までに政府によるウクライナ人家族への児童支援等の支出は、24億ズロチ(約810億円)に及ぶのだとか。ポーランド政府は今回、彼ら100万人の難民に対する財政支援も打ち切る可能性まで示唆しました。これまで、ポーランドは兵器供与の旗振り役として、最も強力な支援国だっただけに、戦争の長期化で支援疲れが見え始めているウクライナ友好国の間に動揺が広がることは間違いないでしょうね」(同)

 ポーランドでは10月15日に総選挙を控えており、モラウィエツキ首相の発言は農村部の支持確保を狙った戦略との見立てもあるが、との見立てもあるが、ミュラー政府報道官は18日、避難民向けの「居住に必要な条件の免除や労働許可証の付与」及び「教育や医療機関、家族手当の無償提供」等の支援を来年は継続しないとの声明を発表、もはや決裂は間違いないとみられる。

 ロシアにとっては思う壺、とも思えるこの対立構図がどこまで拡大するのか。欧米の対ロ結束に大きな乱れを生じさせる恐れもあることから、今後の行方が気になるところだ。

(灯倫太郎)

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