ロシアの“超残虐”軍事会社「ワグネル」が最も恐れるNGO「モーツァルト」とは

 ウクライナのオデーサ周辺では、ここ数週間、ロシア軍による攻撃が激化。インフラが破壊され、住民たちは相次ぐ停電の中で厳しい冬を迎えることになった。

 オデーサ周辺での攻撃も含め、現在、ロシア軍の指揮命令系統で重要な役割を担っているのが、プーチン大統領の盟友と言われる、エフゲニー・プリゴジン氏が率いるロシアの民間軍事会社「ワグネル」グループだ。

「11日には、ルハンスクでワグネルが本拠地にしていたホテルが、ウクライナ軍のドローン攻撃を受け囚人兵など50%が死亡した、との報道もありましたが、詳細は明らかになっていません。ただ、ワグネルによる『囚人スカウト』はロシア国内に限ったことではなく、クリミアやシリア、中央アフリカ共和国でも同様のスカウトが行われているという話もあります。つまり、彼らは常に『使い捨て』出来る兵士を大量にキープしていると考えられています」(全国紙記者)

 そんな冷血なワグネルが恐れるNGO組織があるという。それが、今年3月にウクライナの首都キーウで結成された「モーツァルト・グループ」なる米国の人道支援団体だ。

「創設者のアンドリュー・ミルバーン氏は、米軍海兵隊に30年以上勤務した退役大佐。海兵隊時代は、ソマリア、イラク、アフガニスタンでの戦闘活動に従事し、秘密作戦などの特殊任務を行ってきた、いわばプロ中のプロだといわれています」(同)

 現在、モーツァルトには100名ほどが在籍、ウクライナ各地で軍事訓練の実施、民間人の避難や救助、人道支援物資の配布などの活動を行っているとされる。

「グループの名はあの大作曲家、アマデウス・モーツァルトにちなむもので、リヒャルト・ワーグナーにちなんで名づけられた『ワグネル』へ対抗する意味合いがあると言われています。そんなことから、ワグネルにとってモーツァルトは、まさに”目の上のたんこぶ”。ワグネル創設者のプリゴジン氏は、11月にメッセージアプリ『テレグラム』上で、『アメリカの傭兵たちが痛手を負ったウクライナ部隊の指揮を執っている』と、モーツァルトに対して敵意をむき出しにしているのです」(同)

 そのため、モーツァルトはこれまで数回、ワグネルにより攻撃された形跡があり、ミルバーン氏はニューズウィークの取材に対し「これまでに私たちが滞在した3つのホテルがミサイル攻撃を受けた」と、ウクライナ東部でワグネルの標的となったと証言している。

「なんでも1つのホテルは、ミルバーン氏らがチェックアウトした翌日に攻撃を受けたようですが、インタビューに対し同氏は『私たちが標的だった可能性も間違いなくある。人道支援を主とした組織に対して大した力の入れようだが、どんな脅しや中傷が飛び交っても、活動は続ける』と答えています。モーツァルトは今後も、最前線で支援活動を行いながら、前線で起きている出来事を写真や動画で投稿していくとしているので、ワグネルの犯罪行為が明らかになっていく可能性は高いでしょう。今後、ワグネルによる攻撃が、さらに激しさを増すことが予想されます」(同)

 5月以降、危険地域から住民600〜700人を避難させたというモーツァルト。更なる活躍に期待したい。

(灯倫太郎)

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