ロシアの次の標的?「モルドバ」大統領は米ハーバード卒の「鉄の女」だった

 この日、プーチン大統領が何らかの勝利宣言、あるいは正式に「戦争」を宣言し、大規模な国民の動員に乗り出すのではないか、とも伝えられていた「戦勝記念日」が9日、ロシアの首都モスクワで行われた。だが、演説でプーチン氏はウクライナ侵攻に関し、「祖国の平和のために戦っている。ナチズムを打ち負かした人々を記憶し、世界大戦の恐怖を繰り返さぬことが我々の義務である」としたものの、結局従来の主張を繰り返すだけにとどまり、逆にそれがロシア軍の置かれた現状を物語っているように見えた。

 とはいえ、ウクライナ国内では相変わらずロシア軍による空爆が続いており、隣接する周辺諸国が「明日は我が身」との思いで、戦々恐々とした日々を送っていることに変わりはない。特にウクライナの南西に位置する「モルドバ共和国」は親ロシア派の一定の支持基盤があることから、ロシアとしても軍事作戦の大義名分を得やすいため、予断を許さない状況だと言われる。そんな中、モルドバ国民がその手腕に期待を寄せているのが、「鉄の女」と呼ばれる美人大統領なのだという。

「モルドバは過去十数年に渡り、オリガルヒ(政商)支配による政治腐敗時代が続いていました。前大統領で親ロシア派のドドン氏も、汚職と貧困への国民の不満を受けて16年に誕生したのですが、かえって既得権益を守るばかりで私腹を肥やしたとも言われています。そんな中、司法改革と汚職撲滅を掲げてドドン氏を破り、同国女性初の大統領となったのがマイア・サンドゥ氏。彼女は、モルドバのリシペニという小さな村に生まれ、現在49歳。これまで独身を貫きキャリアに身を捧げてきましたが、妥協を許さず信念を曲げないその政治姿勢から『鉄の女』の異名をとっています」(通信社記者)

 サンドゥ氏は2010年に米ハーバード大ケネディ行政大学院を修了し、2012年まで世界銀行に勤務。本国に戻り教育大臣に就任した後は、大胆な学校改革を推進。2015年、現在の政治母体となる政治団体を立ち上げた。

「サンドゥ氏は教育大臣時代、上役にあたる首相が学歴を詐称していると検察に訴え、首相辞任に追い込んだこともあり、とにかく不正に対しては厳しい姿勢で臨むという気質の持ち主。2020年に大統領選に出馬、親ロシア派の現職だったドドン大統領に勝利した後も、政界における腐敗体質を根絶すべく闘う姿が国民から支持を受けています」(同)

 ロシアでは5月9日の戦勝記念日に、黒とオレンジの縦縞の「聖ゲオルギーリボン」をつけて祝うという習わしがあるが、サンドゥ氏は「これらのシンボルは、破壊と死とその他の野蛮なシンボルとともに歴史のゴミ箱に捨てるべきもの」として、当日はモルドバ国内において、このリボンと『Z』などのシンボルを公に示すことを全面禁止。違反者に対しては罰金を課すことを宣言し、強気の姿勢をアピールした。

 その背景には、ロシアの恐怖に対する「鉄の女」の揺るぎない意志があるようだ。

(灯倫太郎)

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