台湾総統選「アンチ中国」の民進党勝利で、習近平政府「圧力」の代償

 2024年は空前の「選挙イヤー」とも言える年で、3月のロシア大統領選、11月のアメリカ大統領選挙がその最たるものだが、既に終わったバングラデシュ、パキスタン、インドなど約50カ国で総選挙がある。

 そして日本とも関係が深く、米中対立の先行きを占う意味でも非常に大事な台湾総統選挙が1月13日にあったが、結果は既に報じられている通り、蔡英文氏路線を引き継ぐ与党・民進党の頼清徳氏が下馬評通り勝利した。相争った3候補とも、台湾と中国の関係は「現状維持」を主張していたが、それでも中国と距離を置く民進党候補が勝利したことで、習近平主席は歯噛みしていることだろう。毎年恒例の新年を迎えるスピーチで、台湾の統一は「歴史的必然」とのたまったばかりだからだ。

「そのため選挙前、中国は嫌がらせによる選挙圧力に余念がありませんでした。直前に謎の気球を台湾上空に飛ばしたり、台湾上空を通過するという今まで打ち上げたことがなかったルートの衛星を打ち上げたり、野党候補がリードとのニセ情報のニュースを流して情報の攪乱を図っていましたからね。また投票の直前には、蔡英文氏の前の総統で親中国の国民党の馬英九氏が『習近平を信用すべき』と発言しましたが、明らかに中国が促がしたものでしょう。ところがこれがあまりに露骨で波紋を呼んで、国民党の侯友宜候補が火消しをする場面がありました。やはり民主主義のない中国の選挙対策はピントがズレていますね。一連の工作で、わざわざ台湾の人の態度を硬化させたんですから」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 そして「現状変更」を望まないアメリカは結果を歓迎。ブリンケン国務長官が「祝意」を表明すると、対する中国政府は「民進党は民意を反映できない」と当てこするしかなかった。さらに踏んだり蹴ったりで、中国国内ではそんな共産党政府の“姑息”ぶりが嗤われているという。

「中国のSNS上に『我が国のメディアは嘘をついているようだ』『正反対のことを言っている』といった投稿が目立っているのです。そりゃそうですよ。国民党候補が勝つだろうというニセ情報を流していたわけですからね。ブーメランが跳ね返って、後頭部に突き刺さった形です」(同)

 だが残念なのは、そんな中国政府の悔し紛れの悪態がある意味正しいことだ。同時に行われた立法委員(国会議員)選挙では、与党の民進党が単独過半数をとれず、いわゆる「ねじれ国会」を強いられるからだ。

 だから今後、政権運営が困難になれば「それ見たことか」と言い出すに違いなく、習近平はいまからウズウズしていることだろう。

(猫間滋)

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