今年9月にコカインの使用容疑で逮捕された人気ラッパー。12月某日に開かれた初公判では、10代からの薬物使用歴を明かし、音楽活動を続行させる意向を示していたが…。「即日判決」までのやり取りを、お笑い芸人で裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火がリポートする。
公判の終盤、裁判官から被告人のラッパーに質問です。
裁判官「今事件を振り返ってどう思ってますか?」
被告人「使ってる時は自分が体調悪くなったりして自分だけのことと思ってたんですが、逮捕されると家族とか応援してくれてたファンにも迷惑を掛けるって分かりました」
裁判官「家族とはどんな話をしました?」
被告人「様子がおかしいのは気付いてたみたいで。でも家族には隠れて使っていたので、薬物とは分かってなかったと。もう二度としないって話をしてます」
裁判官「薬物事件って再犯率が高いんですよ。使った原因が不安とか不眠だとまたやってくるのかなぁと思うんです。大丈夫ですかね?」
被告人「逮捕された時期って、自分の人生で一番忙しくて。毎週末どこかでライブして、お金も入ってきて、そのお金をクスリに使って…。なので、不安を抱えない生活をします」
裁判官「悩みを聞いてくれる人がいなかったのも問題なのかなと」
被告人「周りに薬物をやってる人がいなかったので隠れてやってたんですけど、もう事務所の人も知ってますし。家族も知ってるので相談します」
ライブ後の孤独感を紛らせるためってことは、相談相手もいなかったんだろうから裁判官もその辺が気になっているようです。
裁判官「薬物でここに来る被告人って、みんな『もうやりません』って約束するんですよ。それが1年とか2年とか経つと、そろそろいいかとかたまにはいいかって甘い気持ちが出てくる人がまたここに来ちゃうんです。SNSで簡単に入手出来るんでしょ? 踏みとどまれますかね?」
被告人「はい!」
裁判官「こんなこと言われたくないでしょうけど、夢を売る仕事なのでね、その辺は自分を大切にして頂きたいです」
仕事柄、再犯したら悲しむ人の数が多いよとアドバイスをして被告人質問は全て終了。
この後検察官は、被告人は常習性があるとして懲役1年6月を求刑です。一方弁護人は、医師から処方された薬しか服用せず、Xはもう利用しないので執行猶予付きの判決が妥当だと弁論していました。すると裁判官が…。
裁判官「では、5分休廷しまして判決を言い渡したいと思います」
と、即日判決にすると宣言です。そして裁判官は法廷を後にしました。もうこれは執行猶予確定演出ですよ。
そして5分後。判決文を書き終えた裁判官が法廷に戻ってきて、判決の言い渡しです。結果は、懲役1年6月執行猶予3年。
判決理由としては、薬理効果を求めてコカインを購入して施用していて、親和性が見られる。しかし、原因である不安や不眠の時は医師に薬を処方してもらうと約束したし、音楽家としての活動に邁進すると誓ったので執行猶予付きの判決にしたと。そんな判決理由を読み終えると、裁判官が「ホントあの~…、執行猶予の判決ですけど、使用歴を見ると心配なんですよ。もう周りの人を今回と同じ気持ちにさせないと。あと、ご自身の信頼は前向きな活動を積み重ねることでしか得られないと思いますので」と説諭を加えて、裁判は閉廷となりました。
音楽活動を続けるからこそ、この判決になったのかという感じでしたね。裁判官が被告人のファンってことはないか? ちなみに裁判後、Xで被告人のアーティスト名を検索したところ、まだアカウントがそのままになってました。話が違うじゃないですか…。アカウントがそのままどころか、年明けのライブの告知をポストしてるんです。法廷でXは開かないと言っただけでアカウント削除を誓った訳でもないし、スタッフが管理してるかもしれませんしね。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
大川興業所属のお笑い芸人であり、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載多数。