10月に開業を迎えたインドネシア高速鉄道「Whoosh」(ウーシュ)。当初、日本が受注すると見られていたが、後から名乗りを上げた中国が横取りする形で入札。日本メディアはこれをインドネシ政府の「裏切り」と報じている。
さらに新型コロナの影響があったとはいえ、19年の予定だった開業時期は4年も延び、工事費用も大幅に増加。最終的には「高い」と言われた日本案を上回るなど紆余曲折の末にようやく完成にこぎつけたという印象だ。
12月上旬、記者はこのウーシュに乗車。ジャカルタとインドネシアの第三の都市バンドンの142.3キロを結ぶが、現在開業中の3駅はいずれも街の中心部から離れた郊外。ジャカルタ側の始発駅「ハリム駅」まではLRTや通勤鉄道でアクセス可能だが、市内中心部からだと乗り換えなどを含めると1時間はかかる。
駅は日本の新幹線駅を思わせる高架型の構造で、規模もかなり大きい。構内にはすでに数多くの飲食店が営業しており、その中には日本でおなじみの「吉野家」も。改札のある駅待合室には空港のように保安検査を通らなければ中に入ることができず、中国の駅と同じシステムを採用していた。
改札は日本の地方駅のように出発時刻の少し前にならないと開かず、改札前には大行列。ようやく開いてホーム階に上がったが、日本と違って売店や自動販売機は1つもない。ただし、各乗車口の前に駅員が立っており、自分の車両や座席の場所を気軽に聞けるようになっていた。
列車は8両編成で、座席はエコノミー、ビジネス、ファーストの3クラス。記者は一番安い20万ルピア(約1830円)のエコノミーだったが、通路を挟んで2席―3席の新幹線の普通車と似た造りで開業直後なので車内もきれいだ。
列車は騒音や振動もほとんどなく、発車して10分ほどで最高速度の時速350キロに到達。しかし、パダララン駅には乗車時間30分とアッという間に着いてしまい、昨年開業した西九州新幹線(※最速23分)のように車内でのんびりくつろぐヒマもなかった。
ちなみにパダララン駅からバンドン駅までは通勤鉄道で約40分。ジャカルタからの在来線特急の所要時間は約3時間で、市内との移動時間、乗り換えにかかる時間などを考慮すると高速鉄道のほうが30分前後の短縮にはなるが、駅が郊外にあるためかそこまで早く着けるというわけではないようだ。
当たり前のように感じていたが、ほとんどの駅が街の中心部にある日本の新幹線は我々が思っている以上にスゴいことなのかも。
(高島昌俊)