ロシア大統領選「プーチンの対抗馬候補」はプーチン以上に危険人物だった!

 いよいよ今年も12月に入り、残すところ1カ月を切った。今月にも来年の大統領選への出馬を表明するとみられるロシアのプーチン大統領だが、現在、通算4期目となる同氏が来年の大統領選で5選された場合、2036年まで2期にわたって大統領の地位にとどまることも可能だ。

 ところがそんな中、とんでもない人物が大統領選出馬の意向を示したとして、ロシア国内に波紋が広がっている。全国紙国際部記者が解説する。

「その人物とは、プーチン政権のウクライナ侵攻停滞を批判し、7月に拘束された元連邦保安庁(FSB)大佐のイーゴリ・ストレルコフ(本名・イーゴリ・ギルキン)氏です。ギルキン氏は2014年2月からのクリミア併合ではFSBで情報将校を務め、ウクライナ東部で新ロシア派勢力とウクライナ軍が武力衝突した際は、新ロシア派の司令官を務めた国家主義者。14年7月に起こったマレーシア航空機撃墜事件(乗客乗員298人が死亡)に関与したとして、昨年11月にオランダの裁判所から終身刑が言い渡されている被告3人のうちの1人でもあります。そんなヤバい人物が出馬の意向を示したことで、国内では大きな話題になっているのです」

 ギルキン氏が、支持者らに向けた書簡をテレグラム内にアップしたのは先月19日のこと。そこには、自分の出馬が認められるかどうかはわからないが、《大統領選に出馬するのは、トランプゲームでイカサマ師と対戦するようなものだ》として、勝者がすでに確定しているような「でっちあげ選挙」を混乱させたいとして、支持者らに選挙活動本部を設置し、立候補のための署名集めを始めるように求めている。

「支持者らによれば、ギルキン氏は過激派活動を呼び掛けた罪で7月に拘束・訴追されたものの罪状を否認。刑事捜査は12月18日にまで延長されており、有罪判決も受けていないことから理論上は選挙に出馬できると主張していますが、はたしてこれをクレムリンが認めるかどうか。仮に有罪になった場合には、最長で5年の禁錮刑を科される可能性がありますからね。文字通り、プーチンの胸先三寸といったところでしょう」(同)

 軍事評論家となったギルキン氏は昨年2月のウクライナ侵攻開始以来、膠着した戦況に業を煮やし、プーチンを「クズ」「無意味な存在」「空間を無駄遣いする卑怯者」などと罵倒し続けてきた。しかし、元FSB情報将校で、クリミア併合の際に大活躍した立役者ということもあり、クレムリンも簡単に手出しできなかったともいわれるが、そんな同氏を逮捕に導いたのが、6月に反乱を起こしたワグネルのプリゴジン氏の影響だというのだ。

「ロシア政府は当初、ウクライナ侵攻支持派であれば、個人の見解を配信するのを黙認していました。ところが国防相や参謀総長に対し、あれだけ悪態をつきまくっていたプリゴジン氏も、反乱失敗後はすっかり鳴りを潜めてしまった。これが布石となり、いくら戦争支持派でも、政府批判など一線を越えた者は処罰するという方針に転換しました。それが結果、誰も手を付けられなかったギルキン氏の逮捕、拘留に繋がったとみられています」(同)

 つまり、同氏の逮捕は、2度とプリゴジンのような人間は出さない、というプーチン氏の強い意思の表れである可能性が高いようだ。さて、この獄中出馬宣言の行方は…。

(灯倫太郎)

ライフ