大手居酒屋チェーン「鳥貴族」を展開する鳥貴族ホールディングス(HD)の子会社が運営する「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」渋谷店が、11月20日の営業をもって店を閉めることが明らかになった。同店がオープンしたのは22年3月。わずか1年8カ月での閉店にさまざまな声が上がっている。
トリキバーガーは、21年8月に東京・大井町に1号店がオープン。その後、渋谷に進出し、今年8月に京都・伏見稲荷に3号店を出したばかりだが、渋谷店の撤退で、当面は2店舗での営業となる。
「そもそもトリキバーガーは、コロナ禍で鳥貴族が苦境に立たされる中、その打開策として出店されたと言われていました。回転寿司や焼肉、ハンバーガーショップは外食産業の中でもコロナ禍の影響が少なかったということに加え、鳥貴族ホールディングスの大倉忠司社長が、以前からアメリカでのチキンバーガー人気に目を付けていたとされており、いわば社長の肝いり事業でもあったのです」(経済ジャーナリスト)
実際、外食の選択肢が狭められた中、トリキバーガーはその目新しさもあって出店初期は消費者に大いに受け入れられた。だが、この時期はチキンバーガーブームの年でもあり、ロイヤルホールディングスが「Lucky Rocky Chiken」をスタートさせ、ワタミも以前からあった「bb.q オリーブチキンカフェ」の店舗数を伸ばしている。チキンをめぐって群雄割拠となった時期でもあったのだ。
「鳥貴族自体は全国に600店舗以上を誇りますが、かつて280円均一だったメニューも2度の値上げを経て、現在は税込み360円となり、デフレ経済下では伸びた業態もインフレでその優位性が揺らいでいます。またアフターコロナで外食が復活したとはいえ、かつての居酒屋需要がそのまま戻るわけではなかった。鳴り物入りで始めた新業態も、今回の渋谷店の閉店に象徴されるように必ずしもうまくいっているとは言えず、今後も厳しい舵取りが待っていそうです」(前出・ジャーナリスト)
もっとも、渋谷店の撤退によってトリキバーガーそのものがなくなるわけではない。これまでも斬新な手法で業界や消費者を驚かせてきた鳥貴族だけに、次の一手が期待されるのである。
(猫間滋)