焼き鳥チェーン大手の「鳥貴族」は、5月1日から全品均一価格を10円値上げして360円(税込)にすると発表した。同チェーンは創業から2017年まで全品280円(税抜)均一で提供を続け、手頃な価格から人気になっていたが、今回の値上げで焼き鳥は一本あたり180円になることから《さすがに高い》といった声も聞こえてくる。
「鳥貴族は昨年4月にも人件費や資材・原材料費等のコスト上昇を理由に値上げを実施していました。しかし、その後も原材料費や物流費、エネルギーコストが想定を超えた水準で上昇したことを受け、『自社の取り組みだけではコスト上昇分を吸収することが困難な状況となったため』と値上げ決断の理由を説明しています」(フードライター)
同チェーンは17年10月に創業以来続けていた280円(税抜)均一を298円(税抜)に値上げしたところ深刻な客離れが発生し、19年3月まで16カ月連続で客数はマイナスを記録した。しかし、22年4月に実施した値上げではそれほど大きな影響もなく、同8月〜10月の連結決算では同期としては3年ぶりの営業黒字となるなど行動制限の緩和もあって客数が回復していた。
「前回の値上げは従業員の待遇を改善するという大義名分があったので、値上げを歓迎する声もありました。今回もコスト上昇という抗えない理由で致し方ないところがありますが、受け止められ方は違ってくるでしょう。360円均一ともなると、他にも手頃な価格の居酒屋はいくらでもあるので、再び他店に客が流れてしまう可能性は十分にあると思います」(前出・フードライター)
もはや「安さ」という強力なウリが薄まった鳥貴族。どのような差別化で厳しい状況を切り抜けるか。
(小林洋三)