プーチンが習近平との会談後に核の鞄「チェゲト」をチラ見せした理由とは

 習近平国家主席が提唱する「一帯一路」の国際会議が10月17日、18日の2日間、北京で開催され、ウクライナ侵攻で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ている「戦争犯罪人」であるロシアのプーチン大統領が、ウクライナ侵攻後初めて訪中した。

 会談では、中東情勢について米国を批判する一方、改めて中露の団結をアピールしたが、中国側の報道はプーチン氏が上目使いに習主席を見上げる映像を多用するなど、あたかもロシアに対し中国が優位だと印象付ける内容が目立っていた。そんな中、18日にプーチン氏が北京を訪問した際にチラッと映った、同行する海軍将校が持つブリーフケースが話題になっている。

「映像はウクライナのキーウ・ポスト紙がX(旧Twitter)に投稿したもので、習近平との会談を終え会場を後にするプーチンに続く、黒いブリーフケースを持ったロシア海軍将校2人の姿が捉えられていて、最後に『チェゲト』と呼ばれる核の鞄がズームアップされるというものです。この動画をロシア国営通信社のRIAノーボスチがTelegramでメディア向けに公開し拡散したというわけですが、なぜこのタイミングで『チェゲト』をチラ見せしたのかに注目が集まっています」(全国紙国際部記者)

 チェゲトとは、ロシアとジョージアとの国境近くにそびえるチェゲト山の名前が付けられた通称「核のカバン」のことで、詳細は明らかになっていないものの、ソビエト連邦時代の1985年頃から運用されてきたと伝えられる。

「核のカバンといっても、その中に核スイッチが入っていて、押せば発射するということではなく、実際には戦略核戦力を指揮する軍司令部へ指示を出す特殊な通信システムと繋がっているとされています。そして、政府高官とコミュニケーションを取り、実際に核兵器を使用するかどうかについて決断を下され、最終的に戦略核兵器の指揮・統制を取る人員や機関に接続される。この一連の流れをスタートさせるのが、このチェゲトだと言われています」(軍事アナリスト)

 プーチン氏には、ロシア連邦大統領就任時にこのチェゲトが引き継がれ、移動の際には必ず、士官が持ち歩いているが、実はチェゲトは大統領だけでなく国防相と参謀総長にも渡されており、運用するためには3人全員の操作が必要という説もある。とはいえ、なかなかチェゲトが映像で捉えられることはないため、今回たまたま映り込んでしまったのか、あるいは何らかの意図があって、あえてチラ見せしたのか等々、様々な憶測が飛び交っているようだ。

「世界最大の核保有国であるロシアは、2022年の時点で5977発の核弾頭を保有しています。現在、ウクライナで使用されるのではないかと懸念されているのが、局地的に使用可能な戦術核ですが、戦争が長期化する中、西側も支援疲れが深刻な問題になってきている。そこで、今回あえて、チェゲトの映像を見せることで、改めてアメリカやNATOをけん制し抑止力を高める狙いがあったとみる専門家も少なくない。ただ現実問題、ボタンを押せばロシアがどうなるかは、プーチンもわかっているはずですからね。まだまだ、せめぎあいは続くでしょう」(前出・軍事アナリスト)

 さて、映像に映り込んだ「チェゲト」が意味するものとは…。

(灯倫太郎)

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