夢グループ石田社長が激白「これは詐欺みたいな仕事だぞ!」ガツンと怒られた見よう見まねの広告営業

 世の中には常識と非常識というものがあります。例えば学校や企業における規則。いわばルールですね。僕は若かりし頃、このルールというものがよく理解出来なかったが為に、部活やバイト先、就職先で様々なヘマをやらかしてしまいました。

 生活に困窮した僕は、とにかく日銭を稼がなければいけません。空き瓶を酒屋さんに持って行っては480円ほどのお金を貰い、毎日を過ごしていました。

 そんなある日、お店の宣伝とともにその地区の地図を載せる広告営業の仕事があると知ったのです。早速、書店に向かった僕は「すいませ~ん! ここの町の地図が載っている本ってありますか?」と店員さんに聞きました。すると「ありますよ」と言って、すぐに持ってきてくれたのはいいんだけれど……なんと「1万円になります」って言うの!

 高いなぁ~と思ったんだけど、開いてみたら確かにブロックごとに詳しく地図が載っています。“仕方がない、これは投資だ! これがあればお金儲けができるぞ”と思って地図帳を購入しました。それを文房具屋さんで拡大コピーして、地図の周りに20軒分ぐらいの広告が入るスペースを設けて近所の小児科や歯科、不動産会社に営業をかけていきました。

「こんにちは~、町内会の地図を作るので一枠8000円で広告をお願いできませんか?」

 以前、営業マンとして先輩からコツを教えてもらっていた事も幸いし、だいたい10軒も回れば1軒ぐらいのペースで契約が取れました。2日もあれば20軒。つまり、1軒8000円として約16万円の収入になります。

 19歳後半、もうすぐ20歳を迎えようとしていた僕は「こんな簡単な商売はないな!」と有頂天でした。大好きだったパチンコでさえ、したいと思わなくなっていたほどです。考えてみて下さい、1日に8万円ですよ! しかも労働時間は自転車に乗っての営業周りでだいたい5~6時間です。

 ところがある日、意気揚々と集金に向かった米屋さんで呼び止められました。

「ちょっとキミ、もちろん町会長のところにも納品はしてくれているんだよね?」

「えっ? 何ですか? 僕は広告料をいただいたところだけに納品しています」

 すると、みるみるうちに店主の表情が強ばり、そのまま町会長のところに連れて行かれました。

「キミ、いくつ?」

「19歳です」

「キミの会社の社長は?」

「いません。僕ひとりでやっているんです」

 と、その言葉を言い終えた瞬間、町会長が言いました。

「キミ、これは詐欺みたいな仕事だぞ。そんな事をやっていちゃいかん」

「えっ? 会長、何が詐欺みたいなんですか?」

 本当によく理解していなかったものですから、素直にそう聞き返しました。すると、会長は「単に広告費をもらった20軒だけじゃない。町内会の会員分だけ印刷して納めなくてはいけないんだ」と丁寧に説明をしてくれたのです。

 それだけではありません。「キミはまだ19歳。若くして一生懸命やっている事はよくわかった。今、ちょうど町内会の電話帳も作るところだ。きちんと約束を守って町会員に納品できるのなら、その仕事を任せよう」とまで言ってくれました。
 
 電話帳には国会議員や都議会議員、区議会議員のほか、企業などの広告も入ります。町会の役員さんや婦人会の方々がお集まりになる場所にご挨拶にまわるうちに“信頼をされ、責任ある仕事を任せられているんだ”という気持ちが芽生えて参りました。
 
 次第にほかの区も紹介してもらえるようになり、以前にも増してやる気がみなぎりました。とはいえ、広告原稿は自分で作り、原価を抑えました。地道にそんな事を続けているうちにアルバイトも15人ほど雇えるようになり、年収は5000万円ほどになりました。
 
 この仕事は10年間ほどやりましたが、いまの僕を形成する基盤となった大きな転機となったのです。

石田重廣(いしだ・しげひろ)株式会社夢グループ、株式会社ユーコー代表取締役社長。1958年7月1日生まれ、福島県出身。自ら出演する「夢グループ」のテレビショッピングで大人気。昨年、保科有里とのデュエット曲「夢と…未来へ」で歌手デビュー。

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