「乗車料金1万円!」「霊峰にそぐわない」富士山の登山鉄道構想が進まない理由

 まだまだ残暑は厳しいが、どこか秋めいてもきている昨今。そんな中、富士山は9月10日に閉山した。来年7月下旬まで山は閉められる。一方、現場が落ち着いたことで今後再燃必至なのが「富士山登山鉄道」を巡る是非の議論だ。

「富士山に登山のための鉄道を敷くという構想自体は、実は1920年代からあるのです。以後、持ち上がっては消えを繰り返してきましたが、大きく潮目が代わったのが2013年にユネスコ世界遺産に登録されてから。もともと世界遺産登録の際には、登山者の多さやそのための環境負荷から、オーバーツーリズムの解消の要請を受けていました。ところが、22年には5合目まで通じている有料道路の富士スバルラインまで車で訪れる観光客が500万人と、世界遺産登録前の2.2倍まで増えていて、これを解消しないと、最悪、登録取消もあり得る状況にあるのです」(旅行ライター)

 そこで山梨県が動き出したのが19年。勉強会を開催するなどして、今年6月に実現化のための予算6200万円をつけた。計画ではスバルラインにLRT(次世代型路面電車)を走らせることで、電車で訪れる登山者の利便性が高まり、観光客の数もコントロールできて、環境にやさしく、地元の収益にもなるなど、多くの利点があるとされた。

 ただ、総延長25〜28キロの整備費が1400億円もかかることや、地元の観光連盟から「理念が不鮮明」と指摘されたり、「霊峰としての信仰の面からそぐわない」といった、反対意見も少なくない。

 また、地元の富士吉田市も反対していて、閉山翌日の11日には、堀内茂市長が「電気バスを走らせれば十分」と、これまでの反対の姿勢を改めて鮮明にした。

 往復1万円という料金設定も不評で、今のところ、県の計画はなかなかスムーズには進まないようなのだ。
 
(猫間滋)

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