前回の宝永大噴火(1707年)から215年が経ち、いつ噴火してもおかしくないと言われている富士山。その際、甚大な被害が見込まれる神奈川・山梨・静岡3県は、21年3月発表の最新ハザードマップに基づき避難計画を見直し、中間報告を今年3月30日に公表。
それによると噴火3時間以内に溶岩流の到達が予想されるエリアが拡大。避難対象となる住民の数は、従来の1万6000人から11万6000人となんと7.25倍に。しかも、これまで避難には車の使用が認められていたが、高齢者や障がい者などを除き、徒歩による避難へと改められている。
「これだけの人数が一斉に車を使えば、周辺道路は確実に大渋滞が起きます。そうなれば助かる命も助からなくなる。でも、富士山周辺地域は車社会。溶岩流が迫る非常事態に車ではなく徒歩による避難を決断できるかは疑問です」(防災問題に詳しいジャーナリスト)
ちなみに大規模噴火時の溶岩流の予想噴出量も7億立方メートルから13億立方メートルとほぼ倍増。最大到達範囲が静岡県の駿河湾に達するとのシミュレーションも出ている。
その場合、東海道新幹線と在来線の東海道本線、さらに東名・新東名の両高速道路が使用不可能となり、不通が長期間に及ぶ事態は避けられそうにない。
「下手すると復旧までに年単位でかかる可能性もあります。そうなれば到達圏内にある自治体の市街地も溶岩流に飲み込まれ、街としての機能を失うことになる。住民の中には数十キロ離れた遠方への避難を強いられるケースも考えられ、そもそも徒歩で間に合うのかという問題も出てきます」(同)
また、14年の御岳山噴火でも多数の犠牲者を出す原因となった噴石、冬場の噴火時に想定される融雪型火山泥流も到達範囲は従来よりも広範囲になっている。
あくまで今回の避難計画は中間発表。とはいえ、避難方法やその経路などについてはまだまだ議論の余地がありそうだ。