北朝鮮のミサイル捕捉情報が日韓で異なるという文在寅の困った“置き土産”

 アメリカのバイデン大統領が5月22〜24日の訪日を終えて帰国した25日、北朝鮮は3発のミサイルを発射した。これを受け27日には、日本の林芳正外相、ブリンケン米国務長官、韓国・朴振外相の日米韓3カ国の外相が北朝鮮を非難する共同声明を発表したのだが、実際の対応現場では足並みが揃っておらず、困った事態のままになっていた。日韓両国でミサイルの捕捉情報が異なっているからだ。

「最初に発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)では飛行距離で日本は300キロ、韓国は360キロと60キロも異なり、2発目の短距離弾道ミサイル(SRBM)でも日本は750キロ飛んだとしているのに対し、韓国側は数十キロでレーダーから消えたとしています。韓国の文在寅政権によって、GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)が機能不全に陥っているせいです」(全国紙記者)

 GSOMIAは日本語の長ったらしい名称にあるように、軍事における秘密情報を共有しつつ、漏洩を防ぐ仕組み。同盟など親しい関係にある国で結ばれるもので、日本と韓国はアメリカやNATOなどとこの協定を結んで繋がっているのだが、これが日韓の間では機能していない状態にある。本来、北朝鮮のような軍事的脅威となる隣国の“蛮行”にはGSOMIAを通じて情報を共有する必要があるのだが、飛んだミサイルがどこに消えたかすら意見が異なるという困った状況に陥っているのだ。

 日韓でGSOMIAが締結されたのが朴槿恵時代の16年11月。ところが文在寅に政権が変わった19年8月に締結関係の延長がストップされた。この直前の7月に韓国の法廷で第二次大戦での日本による韓国人の強制労働の被害賠償判決が出されたからだ。つまり、文政権の反日外交カードとして完全に利用されたのだ。

「この事態に困ったアメリカも仲裁に乗り出しましたが、『条件付き猶予』という中途半端な状態は今も変わっていません。だから文政権の親北朝鮮の左寄り政策にはアメリカも手をこまねいていたわけです。なので保守政権の尹錫悦政権が発足したのはアメリカにとっても朗報でした。だからということもあるのでしょう、バイデンの日韓歴訪は従来の慣例を逆にした『韓日』歴訪で、最初に韓国を訪れました。韓国国内ではこの“優先”を好意的に報じ、日本では『前座扱い』とする報道もありましたが、実際の歴訪の中身を見返せば、アメリカの韓国に対する期待は相当大きかったと思います」(同)

 その証左の1つが、日本の国連安保理常任理事国入りの支持という、手続き的には非常に困難な“空証文”があったものの、全体として韓国に比べて日本が得たものは少なかったように思われる。大いに注目された、中国の台湾進攻でアメリカが直接軍事行動に出るとのバイデン大統領の発言にしたところで、直接の日米関係とは無縁の話だ。とはいえ、北朝鮮では新たな核実験の兆候も見られて軍事的緊張は高まっている。せめてGSOMIAはすぐにも復元されるべきだろう。

(猫間滋)

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